これまで実験してきた、ファミコンのくっきりビデオ出力と、音声のステレオ化を、まとめてファミコンの筐体に収まるように改造しました。
ファミコンがテレビにつながらない
ファミコンにはRF出力しかなく、今のテレビにつなぐことができません。そこで、ビデオ出力と音声出力ができるよう改造していきましょう。
くっきりビデオ出力
ファミコンは、PPUから出ているビデオ信号とCPUから出ている音声信号を、RF回路でRF信号に変換して出力しています。そこで、PPUから出ているビデオ信号を横取りして、ビデオアンプを通すことで、普通のビデオ出力に改造することができます。
波形を見て気づいたのですが、ファミコンのPPUから出ているビデオ信号は、若干波形がなまっています。
こんな感じに、本来カクカクしていないといけない部分が、丸く鈍っています。ということは映像も鈍っていると考えられます。そこで丸まった部分をカクカクになるよう、以下のような回路でフィルターをかけて補正してみました。
ドラクエIIの映像で違いをみてみましょう。
0pFが何もしない普通の映像だと思ってください。数字か大きいほど輪郭がくっきりしていくのがわかります。20pFが程よい感じで、44pFになるとちょっと補正し過ぎといった感じでした。
このフィルタを通したビデオ出力回路を、くっきりビデオ出力回路と名づけました。この回路の実験の詳細はこちらをご覧ください。
いい感じステレオ音声出力
ファミコンの音声はモノラルです。しかしよく回路を見てみると、ファミコンのCPUには2つの音声出力が付いています。CPUの1番ピンがAUX A、2番ピンがAUX Bという名前です。何が違うかというと、音源が違います。
AUX Aは、2チャンネルの矩形波の音源が接続されていて、ファミコン特有のピコピコ音が出ます。AUX Bは、三角波、ノイズ、ADPCMの3種類の音源が接続されていて、主にベースの音やドラムの音などが出ます。
これらの音は、ファミコンの回路の中でミックスされていて、モノラルとして出力されています。これらの出力をミックスせずにAUX Aを左チャンネル、AUX Bを右チャンネルの音声とすると、左のスピーカーからはピコピコ音がして、右のスピーカーからはベースやドラムの音が聞こえるようになります。
こんな感じに、聞こえるようになります。
ステレオ化実験の詳細はこちらをご覧ください。


音源を左右のチャンネルに割り振ることで、ステレオっぽくなりましたが、左右で全く違う音が聞こえると、聞いていて疲れてしまいます。そこで、左の音を右に少し、右の音を左に少し混ぜるようにして、自然なステレオ信号にしてみました。回路はこんな感じです。
AUX AとAUX Bの信号を抵抗でミックスします。2R:Rとすることで、2:1でミックスされて、だいたい左右30度にそれぞれの音源があるように聞こえます。ファミコンから出ている音声信号が小さかったため、14dB(5倍)のアンプを入れて増幅しています。
2020.2.5 追加
アンプ回路も含めると、回路図はこんな感じになります。
抵抗の種類がなるべく少なくなるように、パラメータを設定してあります。上記の例では1kΩと2.2kΩ、10kΩの3種類だけ用意すれば組み立てられます。さらにR7の1kΩは2.2kΩの抵抗2本並列でも構いません。そうすることで2.2kΩと10kΩの2種類用意するだけで組み立てられます。
もし、音が大きいようであれば、ゲインが小さくなるように、R4,R10の抵抗をより小さいものへ変更してみてください。逆に小さいと感じたならば、R4,R10の抵抗値を大きいものに変更してみてください。ボリュームにするのもいいかもしれません。
2020.2.5 追加終わり
RF基板のサイズで回路を作る
くっきりビデオ回路と、いい感じステレオ回路、あと電源回路をひとまとめにして、RF基板と同じサイズの基板に仕上げました。映像、音声出力は3.5mmの4極ジャックにして、普通の3.5mmのAVケーブル(↓のようなの)が使えるようにしました。
元あったRF基板とメイン基板とのケーブルを外します。
作った基板に入れ替えて、配線をすれば完成です。メイン基板には10uFのセラミックコンデンサをつけて縦縞と斜め縞模様のノイズ対策をしています。縞縞対策の詳細はこちらです。


PPUやCPUから出ているビデオ信号と音声信号は極細シールド線でつなぎます。このシールド線が細くてしなやかで、狭いところを配線するのにとても便利でした。
とてもいい感じ
家にある10個くらいのカセット全部でプレイしてみました。テレビはハードオフに売ってしまって家には無いので、キャプチャーケーブル経由でパソコンでプレイしています。
ヘッドホンで聞いてプレイしましたが、ステレオっぽく聞こえていい感じです。縦縞もそれほど気になりません。なかなかいい改造でした。
やってわかったのは、レギュレータがかなり発熱してしまうことと、音声信号に映像に合わせてノイズが入ることです。
発熱は放熱をしっかりする必要があります。もともと付いているRF基板のレギュレータはアルミのシールドが放熱板になっています。それくらい必要なんでしょう。
音声のノイズは、音楽が鳴っている間は全く気にならないですが、無音の時に気になる程度です。どこから来るのか調べたのですが、CPUの音声出力ピンからもともと音声信号に重畳して出ていて対策できませんでした。
コメント
kohapepe様
先日ご教授いただいた情報をもとに、
本日、「いい感じステレオ音声出力(拡張音源対応版)」を完成することができました。
ネット上で他の方が公開しておられる回路も作成してみたのですが、
聴き比べてみると、こちらの回路の方がはるかに音がクリアで立体感があり、
とても「いい感じ」です。
貴重な情報をご教授くださりありがとうございました。
とりあえずお礼まで。
赤いペガサスさん
完成おめでとうございます!
ファミコンは、本当は映像や音声信号はクリアなんですよね。
「いい感じ」なサウンドでゲームを楽しんでください。
コメントありがとうございました。
こんばんは。
最近になってファミコン改造の勉強を始めた者です。
現在公開されている「いい感じステレオ音声出力」の回路は、
拡張音源には対応していないように思うのですが、
(違っていたらすみません)
拡張音源対応の回路を公開していただくことはできないでしょうか?
ペガサス様
コメントありがとうございます。
拡張音源の出力から抵抗で左右の出力へつないだ回路となっています。
拡張音源によって音量が異なるようで、抵抗値はお持ちのカセットに合わせて設定して頂くと良いと思います。
早速のご回答ありがとうございます。
念のため確認させていただきたいのですが、
「拡張音源の出力」というのは、カセットの46Pin、
「左右の出力へ」というのは、この記事の回路図の「Audio1OUT」と「Audio2OUT」のこと
という理解でよろしいでしょうか?
また、抵抗値は実際にテストして決めたいと思いますが、とりあえずどの程度の抵抗値から始めるとよいでしょうか?
キットの回路とは異なるのですが、カセットの46Pinでいいと思います。抵抗の接続先はR5,R11の右側になります。
抵抗値は10kΩ程度から徐々に下げていくと良いのではないかと思います。
早速のご回答ありがとうございます。
とりあえずやってみます。
再三の質問で恐縮ですが、
差し支えなければ、拡張音源の出力をカセットの46Pin以外からとる方法についてご教授いただけないでしょうか?
拡張音源の音声を取り出すのであれば、カセットコネクタの46ピンが最適だと思います。
はじめまして。ファミコンを改造しようと思い、探していてこのサイトにたどり着きました。
自分は電子工作は素人で、よく分からない点があったので、質問させてください。
オーディオのオペアンプの部分ですが、R直列2R並列の後のオペアンプへの入力は+に入れますか?
また、15dB(5倍)の増幅を得るにはオペアンプの-側を非反転増幅回路のように1+R1/R2となるように、抵抗値を追加する必要がある、という認識であっていますでしょうか?
「やあいぬさん」の返信の欄でRには2.2kΩ、2Rには4.7kΩを使用とあるので、それとは別に左右のオペアンプで例えば10kΩ(R1)と2.2kΩ(R2)、それぞれ2個で、合計7個抵抗が必要となる、という考えでいいでしょうか?
Complicatedさんコメントありがとうございます。
Complicatedさんの回路でも大丈夫だと思いますが、参考までに記事内に回路図を追加しましたので、ご覧になってください。
改造が成功するといいですね。「いい感じステレオ」結構いいですよ。
初めまして。こういった分野について全く知識が無いのですが興味があるのでありがたく読ませて頂いてる者です。色々と分からない言葉をググってそれなりに読めるようになったのですが2つだけお聞きしたい事がございます。
ページ真ん中より上辺りの回路図で左右のチャンネルに「2R」とついてそれを「R」という抵抗器が結んでいますが、これは「2R」「R」という抵抗器を購入してつけたということでしょうか?またもしそうだった場合どこで購入したか教えて頂けないでしょうか?それと14dBのアンプの購入先も教えて頂けないでしょうか?
お忙しいところ申し訳ありません。可能な時で構いませんので、お返事いただけれ幸いです。
やあいぬさん ブログ読んでいただいてありがとうございます。わかりにくくてすみません。
2Rの抵抗はRの抵抗値の2倍ということです。たとえはRの抵抗を2.2kΩにすると、2Rの抵抗は4.4kΩとなります。ただ、この値は厳密である必要はありません。4.4kΩの抵抗は無いので近い値の4.7kΩを選択します。ちょっと違くても音には対して影響ありません。
14dBアンプは、LM358などのオペアンプでOKです。ゲインが14dB(5倍)程度になるようにすると、音量がちょうど良くなりました。ここもそんなに厳密ではありません。
なるほど、分かりました!教えて頂き誠にありがとうございます。それと体調を崩しており返信が遅れてしまいました、申し訳ありません。
すいません、最後に一つだけ伺わせていただきたいのですがLM358をネットの通販で探すと「LM358 N」や「LM358 D」など最後に付け足された物がよく見つかるのですがこれはこういったものでも構わないのでしょうか?
お忙しいところ申し訳ありません。
お元気になられて何よりです。
LN358の後につづくNやDは、パッケージを表しています。Nはユニバーサル基板に刺さるDIP型、Dは表面実装パッケージとなっています。形状が違うだけで性能は同じです。作りやすい方でOKですよ。
なるほど、そういう事でしたか!親切に教えて頂きとても助かりました。ありがとうございます。
はじめまして。KIMORI123と申します。
最近ファミコンの改造にはまり、こちらのサイトまでたどり着きました。
ステレオ化改造のことですが、この方法で改造した場合、ディスクシステムや拡張音源に対応しているのでしょうか。
もしも未対応だった場合、スイッチなどを使って対応させることはできるのでしょうか……よろしくお願い致します。
KIMORI123さんブログを読んでいただき、またコメントありがとうございます。
試作で作った基板では拡張音源に対応しているのですが、説明の回路図では説明を忘れてしまいました。
ファミコンの音源は左右30度方向から、拡張音源はセンターから聞こえるようにできます。
後日ご紹介しますね。
お返事を頂けてとてもうれしいです!
そのような魅力的な方法があったのですね!
自分の中では、CPUの1ピンと2ピンから線を引き、それぞれ抵抗とコンデンサをかませ、RCA端子に接続、カードリッジコネクタの45ピンから左右RCA端子に接続すればいいのかなと思っておりました。
是非ともご紹介お願い致します!
多分ですが、任天堂がCPU,PPUをRicohに製作依頼時、
極限までコストカットの弊害でシールドをしなかったと思います
後期型ファミコン(VCCI対応)ですと基板がシールド対策されていますので、
CPU,PPU共にノイズ対策されていると思います
前期型は付近のTV(1-3ch),ラジオ(FM,AM)に結構ノイズが入りましたが、
後期型は近付けなければ気になりませんでした
また、PPU取り外しですが、ホットプレートリフローを使っているのでしたら
少々強引ですが、ハンダが溶けるよりも少々温度を高めにして
PPUの左右をマイナスでこじって取り外します
※電解C、水晶等、耐久性のない部品は予め取り外す
チップ部品を使っていないので、この様な強引な方法が使えます
以前はバーナーを使って基板を焦がして結構駄目にしましたが、
ヒートガンorトースター(温度管理要)orホットプレート(温度管理要)
結構おすすめです
排熱について
純正ACアダプター10V850mA→シリーズレギュレータ78M05ですと効率が悪すぎます
スイッチング5V1Aを直結か、\100均シガープラグ→USB5Vを使い5Vを作りましょう
それから音声ノイズですが、以前の映像と同じくPPUを取り外し、
PPU上下シールド→GNDすれば収まるかもしれません
コメントありがとうございます。
DCDCだと熱は出なさそうですね。シガーUSBは入手がしやすくていいかもしれないです。
音のノイズは、RF接続で遊んでいる時にも聞こえていた音なので、なれるのかもしれません。
ICの両面からシールドするのが最上級の対策かもしれません。でも一旦ICを抜くというのは作業のハードルが高いです。
映像も音声もICの中でマイコンと同居しているのですから、ノイズが入っても仕方ないですね。