基板の製造はSeeedStuidoのFusion PCBに発注しています。いつもは、基板だけ製造してもらって、届いた基板に部品をリフローや手はんだで実装しています。
今回、実装費用が無料ということなので、前々から気になっていた基板実装を、初めて発注してみました。思ったより簡単でした。どうやって発注するのか、順を追ってご紹介します。
Seeed Stuido Fusion PCB Assembly
PCB Assembly サービスとは
Seeed Studio Fusion PCB Assenblyサービスは、基板の製造だけでなく、実装に必要な部品の入手、必要に応じて実装に使うメタルマスクの製造、部品の機械または手実装までをしてくれて、部品が載った完成基板を作ってくれるサービスです。
注文の作業が難しいかなぁという勝手な思い込みで、これまで利用したことはなかったのですが、実装に必要な作業費用が全部無料!ということで、試しに発注してみることにしました。
部品の選定
Seeed Studio Fusion PCB Assenblyで実装する部品は、Seeed Studio Fusionが用意している部品から選ぶ方法と、デジキーやMouserなどのネットショップから、こちらが指定した部品をSeeedStudioに買ってもらう方法があります。今回は、シンプルに安く済ませたかったので、Seeed Studio Fusionが用意している部品の中から、実装する部品を選ぶことにします。
Fusionが用意している部品はこちらより検索することができます。
選べる部品の数は16000以上もあります。部品のサイズ(0603,0402サイズとか)や価格でソートできないので、目的にあった部品を探すのがとても大変ですが、そのうち改善されていくのでしょう。
部品の価格的には、ざっとみた感じでは、結構良心的ではないでしょうか。
何を作るか
自分で実装するには面倒だけど、お試しなので、それほど難しくない回路を考えます。
CPLD動作チェック基板にしようかな
先日、Intel MAX V 5M160 CPLDの基板が完成しました。CPLDの中に回路を作って、テレビに模様を表示する実験まですることができました。
MAX V 5M160のIOピンは、全部で54ピンもあります。これら全てのピンにLEDがつながっていたら、LEDがいっぱい光る実験ができて楽しそうです。
大量のシフトレジスタをCPLD内部に作って、光が流れるように光らせたり、乱数発生回路を作り込んで、大量のLEDをランダムに光らせたり、CPLDで遊びながら、CPLDを学ぶことができそうです。
ということで、LEDがいっぱい実装された、CPLD基板用のドーターボードを作ろうと思います。必要な部品も、LED、抵抗、発振器程度なので、Fusionが持っている部品の中から選べるので、お手軽に試作ができそうです。
KiCadで回路を作る
LED+抵抗の回路を55セット用意しました。54セットがIO用で、1セットは電源ランプ用です。抵抗値は10kΩです。この10kΩというのが特徴です。
LEDに使うには値が大きすぎる感じもしますが、高輝度の緑色LEDは10kΩくらいでも、はっきりわかるほど光ってくれます。インピーダンスが10kΩと高いため、普段は出力ピンとしてLEDを光らせていますが、入力ピンとしても使うことができます。その場合は10kΩでプルダウンしていると、ほぼ同程度の特性となります。普通にロジック回路をつないだり、スイッチを繋いでも大丈夫です。しかもLEDが光るので、入力信号がONしているかどうかの確認もできます。便利でしょ。
部品を選ぶ
Fusionの部品一覧の中ら実装する部品を選定します。
LED
の中のOptoelectronicsにLEDはあります。その中にORH-G36Aという型番の、超高輝度の緑色のLEDがありました。サイズは0603(日本でいう1608)です。
データシートを見てみましょう。
輝度が800から1100mcdと、一般的なチップLEDの100mcd程度とは桁違いに明るいLEDです。単価も$0.01と1円程度です。これはお得。このLEDに決めました。
抵抗
LEDが0603(1806)サイズだったので、抵抗は0402(1005)サイズで実装してもらおうと思います。ShenZhen OPLの中の、Resistorsの中にあります。
10kで検索すると、910kとか510kといった、10kが含まれているけれど、違う抵抗値も検索に引っかかってしまうので、よくよく値を確認してくださいね。
0402サイズで一番安いYageo製を選びました。1個$0.0007。0.1円くらいです。100個載せても10円。安いですね。
発振器
CPLDでシフトレジスタを使ったり順序回路を構築するには、クロックが必要です。MAX Vには内蔵の発振回路が入っているようですが、IPを使って合成しないといけません。まだよくわかっていないので、外部からクロックを供給してしまった方が、手っ取り早いです。
の中のCrystal Oscillatorの中で、3.3Vと検索すると、電源をつなぐとクロック波形が出てくるタイプの発振器が2つ見つかります。
24MHzのタイプと50MHzのタイプです。それほど高速なクロックは不要なので、24MHzにします。
データシートを見てみると、普通にある2520サイズの発振器ですね。これにします。
KiCadでアートワーク
部品が決まったので、アートワーク開始です。前回の、CPLDボードの外形を利用して、その中に部品を配置していきます。
おもて面にLEDを並べて、背面に抵抗を配置しました。両面基板のリフローはホットプレートではできないので、Fusionで実装してくれるというのは助かりますね。
面つけ
Fusion PCBは10cm x 10cmまで、最低料金内で基板が作れます。今回の基板は縦6cm、横4cm程度なので、2枚面つけしても料金は同じです。そのため、横に2枚面つけしました。
面つけの時のポイントです。2枚の基板の間には、Vカットと言う、それぞれを分割するための溝をFusionで入れてもらいます。その溝の幅が0.5mm程度なので、2枚の基板は0.5mm程度離して配置します。
そして、周辺にRが付いている基板の場合には、Rの終端どうしを半円で、滑らかにつないでおきます。
こうすると、製造時に綺麗にルーターで基板を切り出してくれます。
設計が終わった基板を、3Dプレビューで見てみましょう。
こちらがおもて面。LEDがいっぱい並んでします。
こちらが背面。抵抗が並んでいます。この基板がCPLD基板の上にピンヘッダで連結されます。
Fusion PCBAを発注
さて、基板データができたので、そのほかの製造用の資料を用意して、発注していきましょう。
[Free Assembly for 5 PCBs]をクリックして、実装費用無料の注文画面にします。
ガーバーデータの登録
[Add Gerber Files]をクリックして、先ほど作った基板のガーバーファイルをまとめたzipファイルをアップロードします。
ガーバービュアーで、意図した基板データが正しくアップロードされているか確認しておきましょう。
Assembly Drawing & Pick and Place Fileの準備
Assembly Drawingファイルは、部品の配置図で、実装後の完成イメージを提示するファイルです。Pick and Place ファイルは部品の基板上の位置情報が入ったファイルで、機械実装するときの機械に部品の位置を教えるために使うファイルです。これらは、KiCadを操作すると生成できます。
Assembly Drawingファイル
まずはAssembly Drawingファイルから。
Pcbnewのプリンタアイコンをクリックします。
- Edge.Cuts
- F.CrtYd
- F.Fab
の3つだけ残して、他は全てチェックを外します。外形と部品形状だけの情報にします。そして[ページ付け]を「シングルページに全レイヤー」の設定にして[印刷]をクリック。
紙に印刷するのではなく、PDFで出力します。
こんな感じのPDFができます。これは基板のおもて面だけの情報なので、裏面の情報も同様に、
- Edge.Cuts
- B.CrtYd
- B.Fab
のレイヤーだけを選択して、PDFに出力します。
PDFファイル名はそれぞれ
*_assemblyDrawing_top.pdf、と*_assemblyDrawing_bottom.pdfとしてみました。これで、Assembly Drawingファイルができました。
Pick and Place File
次に、Pick and Placeファイルを生成します。
Pcbnewの[ファイル]→[各種製造用ファイル出力]→[フットプリントと位置情報のファイル]をクリック
[座標ファイルを生成]をクリック。
*-top.posと*-bottom.posという2つのファイルが出来上がります。これらが「Pick and Place ファイル」です。
まとめてzip
これら4つのファイルをまとめてzipファイルに圧縮します。
*-fab.zipというファイル名にしてみました。
このzipファイルをアップロードします。
BOMファイルの準備
次はBOMファイルです。BOMファイルは、基板上の参照番号と、実際の部品の型番とを結びつける情報ファイルとなります。まずはベースとなるファイルを、KiCadで生成できます。
回路図エディタ(Eeschema)の右上にある[BOM]のアイコンをクリックします。
- 左側の[BOMプラグイン]の中の「bom2grouped_csv」をクリックします。
- 右下の「生成」をクリックします
- 「成功」と表示されればプロジェクトフォルダの中に、拡張子のないファイルが生成されています
このファイルがBOMファイルです。拡張子に.csvを追加してください。
開くとこんな感じになっています。
SeeedStuidoのサポートページをみると、各列の名称は
- Designator
- MPN
- Quantity
- link
となっているので、A列とB列の間に1列追加して、MPNにします。
MPNの欄に、Fusion の部品番号を入れていきます。
- LED:
- 抵抗
- 発振器
D列行こうは不要なので削除。D列もオプションということなので、無くてもいいのかもしれませんが、わかりやすいように残しました。
今回、2枚の基板を面つけしたので、部品の数を2倍します。
複数枚の面つけをしていないのであれば、そのままでいいです。
このファイルをcsv形式で保存します。
これでBOMファイルができました。早速アップロードします。
正しく認識されて、部品の説明や単価、小計なども表示されます。
以上で、製造ファイルの生成と追加は完了です。
気になるお値段は?
全てのファイルのアップロードが完了しました。あとはカートに入れるだけです。
- 基板製造費 $4.9
- セットアップ費 $25 →無料
- 消耗品費 $15
- 実装費 $301.95 →無料
- 部品代 $17.55
- 運営費 $35 →無料合計 $37.45
たった$38ですよ。両面基板で、ちっこい部品が200個も載った基板が5枚で4000円ちょっと。なんて安いのでしょう。
しかも、送料$20くらいも無料ということでした。
うまく実装されるかな?
何種類か基板をまとめて発注しました。今の状態がProductionとなったので、データに問題がなく製造が開始されたようです。
早く届かないかなぁ。
2019.6.18追加 届きました!!!
ここで作ったCPLD実験セットがこちらより↓↓購入できます。
コメント
弊社ご利用いただき、誠にありがとうございました!
FusionPCBのチコウです。
先ほど記事拝見いたしました。
すみませんが、気になるところ一つあります。
「部品のサイズ(0603,0402サイズとか)や価格でソートできないので、目的にあった部品を探すのがとても大変ですが、そのうち改善されていくのでしょう。」
こちらでもみんなより手軽にSeeed OPL 使うようになりたいですが、お客様の使い方が分からず、どういうところから改善しべきのか、ずっと悩んでいます。
もしそちら何かご提案ありましたら、chiko@seeed.ccまでご連絡いただければと思います。
よろしくお願いします。