ファミコンをビデオ出力に改造するキットFCAVでのファミコンの改造を、より手軽にできるように、部品実装済みの基板を作ってみました。
FCAVとは
普通のファミコンはテレビのアンテナに接続して、テレビでゲームする仕組みになっていて、今のテレビには接続することができません。
そこで、ファミコンをテレビに接続することができる、改造キットを以前作りました。
このキットでファミコンを改造すると、ファミコンが黄色、赤、白のコネクタのビデオ・オーディオ出力になります。これによって、テレビにつないだり、ビデオキャプチャーでパソコンにゲームを映したりできるようになります。
さらに、ファミコンの音声はモノラルですが、このキットの特殊な回路によって、自然な感じのステレオ音声に変換され、これまで以上に臨場感あるゲームが楽しめます。
FACVによるファミコンの改造は2段階
1.基板を組み立てる
FCAVの基板に部品をはんだ付けして完成させます。
2.ファミコンを改造する
ファミコンに内蔵されていたRF変換基板を取り外し、先ほどのFCAV基板に取り替えます。
もっと手軽に改造できたらいいな
FCAVの基板は、高画質ビデオ回路と、ナチュラル擬似ステレオサウンドの回路が入っているので、少し部品が多めです。そこで、この基板を予め組み立て済みにすることで、改造がぐっと手軽になるのではないかと考えました。
FCAV実装済み基板の試作
KiCadで設計
というわけで、実装済み用の基板を設計します。部品は、強度が必要なコネクタ以外は、全て表面実装にしました。
KiCadの使い方は、トランジスタ技術2019年8月号に付録の「フルスペック基板ソフトKiCad5.1攻略本」という付録の本に詳しく書いてあるので、手元にあると便利ですよ。
FCAVで使っていたビデオアンプICのNJM2580は、表面実装部品が入手できないので、入手できかつスペックのいいビデオICに変更しました。1080i/720p対応の高性能ビデオアンプで、ファミコンのビデオ信号波形を忠実に再現してくれます。
電解コンデンサは、ちょっとだけこだわって、日本メーカー製の部品を選定してみました。
基板が届く
JLCPCBで基板と、ステンシルを作ってもらいました。
実装
ステンシルと基板両方の同じ位置に、1mmの穴を開けておきます。この穴に画鋲を刺すことで、基板とステンシルの位置合わせが、一瞬ででき、かつスキージングの時にステンシルがずれるのを防いでくれます。とても便利ですよ。そして、ステンシルの奥にはんだペーストを盛ります。
マルツパーツの会員カード(でなくても、クレジットカードでOK)で、はんだペーストを基板に印刷します。
きれいに印刷できました。
最近使い始めた、常温で保存できるはんだペースト「CHIPQUIK TS391LT50」なかなかいいですよ。きれいに転写できて、ステンシルの目詰まりも少ないです。
電動バキュームピックHAKKO 394でジャンジャン部品を載せていきます。
このバキュームピックは、ピンセットに比べ段違いに実装しやすいです。もうピンセットには戻れません。
電動バキュームピックのおかげで、あっという間に部品を載せ終えました。
載せ終えた基板は、テスコムのコンベクションオーブンでリフローです。120度で3分、140度で1分、160度で1分で、低温鉛フリーはんだにとっていい感じの温度プロファイルになります。
このコンベクションオーブンは、人気なのか品薄なので、見つけたらチェックしてみてください。
完璧な仕上がりです。
ファミコンを改造
ファミコンのRF回路を取り外し、試作したFCAV基板に交換します。さて、正常に動作するでしょうか。
正常に動作しました。映像も、音声も正常です。試作は成功したので、ちょっと量産します。
ちょっと量産
部品の実装
量産といっても20個弱作ります。本当にバキュームピック HAKKO 394は素晴らしいです。
短時間のうちに実装が完了。
テスコムのコンベクションオーブンは、トーストが4枚入るので、10cm×10cmの基板が4枚入ります。今回は8枚同時にリフローできます。
リフローでできた基板に、コネクタ類を手ではんだ付けして、基板の実装完了です。
動作チェック
正常に映像と音声が処理されるか、チェックするジグを作りました。以前作ったMAX V CPLDボードで、NTSCのカラーバーと、3ch(右、左、センター)のビープ信号を発生させます。
使ったMAX V CPLDボードはこれです。
ジグに使っているテストピンはこれを使っています。
ピンの中にバネが内蔵されていて、複数のピンに若干凹凸があっても、もきちんと接触してくれます。このピン用のソケットがあって、このソケットを基板にはんだ付けし、テストピンをセットして使います。
ビデオキャプチャケーブルで、FCAVから出力される映像と音声信号をMacBookでキャプチャします。キャプチャソフトにはOBS Studioを使いました。
写真左奥のMacBookに、カラーバーが表示されています。これで映像のチェックができました。オーディオ信号は、映像の横にレベルメーターが表示されています。目視と耳と両方で確認できました。これで基板のチェックは完了。ジグのおかげで、素早く検査できました。
FCAV完成版が完成!
部品実装済みのFCAV基板が完成しました。これでファミコンのビデオ出力化改造が、より手軽になりました。
ファミコンを今のテレビでも遊びたいという方は、是非ご利用ください。
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