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MC34063を使ったニキシー管用DCDCコンバータを作っています

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MC34063はDCDCコンバータを作るのに昔から使われているICです。そのような一般的な部品でニキシー管用のDCDCコンバータを作ってみます。

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MC34063

MC34063はDCDCコンバータを作るのに必要な制御回路が全て入っています。少ない外付け部品でDCDCコンバータの回路を作ることができます。

8ピンのDIPタイプも普通に入手できます。このICを使って175Vへ昇圧するDCDCコンバータを設計してきます。

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設計準備

参考回路を見てみる

STMicroelectronicsのMC34063のデータシートに昇圧型DCDCコンバータの回路例が書いてありあります。

IC内部のトランジスタだけでなく、外部のパワートランジスタも接続して、コイルに流れる電流をスイッチングし昇圧します。内蔵のトランジスタの最大電圧は40Vしかないので、ニキシー管に必要な175Vを、この回路で作ることはできません。

ハイパワーの場合の回路例も載っています。

MOS-FETを使ってコイルの電流をスイッチングします。MOS-FETのゲートドライバとしてダイオードとトランジスタを使っています。MC34063の2番ピンの出力電流が、ダイオードを通ってMOS-FETをONさせます。OFFの時は2番ピンがハイインピーダンスになってしまうので、GNDに接続された抵抗でトランジスタをONさせて、MOS-FETのゲートの電荷を放電しています。

この回路では、MOS-FETの耐圧が175V以上あればニキシー管用のDCDCコンバータが作れます。

この回路をベースに、回路を設計します。

LTSpiceでシミュレーションしながら設計する

LTSpiceはAnalogDevicesが提供している無料のSpiceシミュレータです。

EEVblogのフォーラムの「Simulate MC34063 on LTspice」トピックの中に、誰かが作ってくれたMC34063のシミュレータファイルがあります。

mc34063.zipをダンロードします。

このzipを展開しMC34063_buck.ascをLTSpiceで開くと、すでにシミュレーション可能な昇圧回路が得られます。

あとは、それぞれのパラメータを変更して、シミュレーションをしながら詰めていけば回路が完成します。

この回路をシミュレーションすると、220Vへ昇圧動作することがわかります。もうすでに設計ができたも同然の状態ですね。

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軽く設計

出力電圧を変更

出力電圧は、5番ピンに接続されたR1、R2の2つの抵抗で設定できます。

出力電圧は、

Vout = 1.25 * ( 1 + R2 / R1 )

の式で求まります。

出力電圧VoutとR1から、R2を求める式に変形します。

R1 = R2 / ( Vout/1.25 -1 )

R2を1MΩとすると、R1は

R1 = 1M / ( 175/1.25 -1 ) = 7.194 [kΩ]

と求まります。

シミュレーションしてみましょう。R2を1Megaに、R3を7.194kに変更し、RUNします。

出力電圧が175Vになりました。

変換効率をシミュレーション

それでは、この回路の変換効率をシミュレーションしてみましょう。

テキスト入力で、

.meas Pin AVG -V(vdd)*I(V1)
.meas Pout AVG (V(vo)*I(R4))
.meas Eff param Pout/Pin

と、入力して「SPICE directive」のラジオボタンをONします。

効率は、DCDCコンバータが安定動作している状態で算出します。出力電圧の変化のグラフで、175Vで安定している期間は、シミュレーション開始から5ms経過後から20msでした。余裕を持って起動後15msから20ms間の情報を使って効率を求めます。

.tranの記述を

.tran 0 20m 15m uic

と書き換えます。これでRUNします。

安定動作している間の波形が表示されます。

[View]-[SPICE Error Log]でログを見てみます。

変換効率は60%でした。

12Vで動作させてみる

MC34063は3Vから動作はしますが、外付けのMOS-FETがONするためには、ゲート電圧が5V程度は必要です。またゲートをドライブしているMC34063の内部のトランジスタの電圧降下が1V程度あるため、電源電圧としては6V以上は必要となります。

そこで12Vを回路の電源電圧とします。

12Vでの効率がどうなるかシミュレーションしてみましょう。

V1の電圧を12に変更します。また、元の回路では、C1の初期値が24Vに設定されていたので、コールドスタートを想定して0にしておきます。

RUNして効率を見てみます。

おやおや? 効率が74%にアップしました。想像ですが、MOS-FETをオフするためのRSの100Ωで消費される電力ロスが大きいのではないかと思います。

ゲートの抵抗値を変化させてみる

試しにMOS-FETのゲートにつながっているR5の抵抗値を変えて、効率がどう変わるかシミュレーションしてみます。

R5の値を{R}に変更して、SPICE directiveに

.step param R list 100 470 1k 2.2k 4.7k

と入力します。R5の抵抗値を 100Ω,470Ω,1kΩと増やしてシミュレーションします。

RUNしてしばらくするとシミュレーションが終了します。

2.2k 4.7kは、175Vに到達していません。

ログを見てみると、R5は100Ωよりも、470Ω程度が効率が良いことがわかります。

シミュレーションは、実際に回路を作って測定しなくても性能が分かるので便利ですね。

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効率を上げる

これまでは、MOS-FETのゲートの電荷を抵抗R5を使って放電していました。もっと早く電荷を抜いてMOS-FETのスイッチングスピードを上げるよう、回路を変更します。データシートに書いてあった参考回路のように、トランジスタの回路を追加します。

シミュレーションしてみると、効率が89%にアップしました。

R5はトランジスタのベース電流が流れれば良いので、もっと大きな値でも良いかもしれません。

R5の値を変えてシミュレーションしてみます。

R5を470Ωの他に、1kΩ、2.2kΩ、4.7kΩ、10kΩを試してみます。

SPICE directiveに

.step param R list 1k 2.2k 4.7k 10k

と入力します。

R5は値が大きい方が良い結果になりました。R5は10kΩにします。

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詳細設計

だいたい設計が完了したので、詳細を決めます。

コイルを決める

コイルのインダクタンス値を決めます。元の設計では220uHが使われていました。例えばBOURNSのインダクタの場合、220uHの等価直列抵抗は350mΩですが、100uHでは160mΩと半減します。また、定格電流も220uHは1.32Aなのに対し100uHでは1.98Aへと増大します。

なるべく小さなインダクタンス値のコイルの方が、損失が小さく大きな電力を変換することができます。

100uH,160mΩと、220uH,350mΩで効率をシミュレーションしてみます。

  • 100uH:94%
  • 220uH:94%

ほとんど変わらない結果となりました。このため、より大電流の流せる100uHにしようと思います。

電流制限

最大電流は6番ピンに接続された抵抗Rscによって制限できます。

Rsc=0.33Ωの時にコイルに流れる電流波形は、下の水色のグラフになります。ピーク電流は800mAでした。

100uHのコイルは2A程度あるので、もっと電流を流すことができます。

Rsc=0.1Ωに変更してみます。

2Aくらいです。100uHの定格電流を少し超えていますが、常時2Aが流れるわけではないので、この設定にしようと思います。

入力コンデンサ

赤のグラフは、電源から出力される電流の変化を表しています。140mAから840mA程度の範囲で変動しているので、リップル電流は700mA程度あります。

現在入力に接続されているコンデンサは220uFです。これを470uFに変更してみます。

200mAから800mA程度の変動になり、リップル電流は600mAになりました。

このため、入力のコンデンサを470uFにしようと思います。

出力電流の確認

設計した回路が、どの程度の負荷に耐えられるかシミュレーションしてみます。負荷の抵抗を電流源に置き換えます。

SPICE directiveを以下のように書き換えます。

.meas Iin AVG -I(V1)
.meas Vout AVG V(vo)
.meas Pin AVG -V(vdd)*I(V1)
.meas Pout AVG (V(vo)*I(I1))
.meas Eff param Pout/Pin

.step param I list 0.01 0.02 0.03 0.04 0.05 0.06 0.07 0.08 0.1

負荷の電流を10mAから100mAへと増やした時の、入力電流、出力電圧、電力、変換効率を求めます。

シミュレーションの結果がこちら。出力電流が50mA程度以上は、昇圧しきれず電圧が低下しています。この回路の最大出力電流は50mA、最大出力電力は9Wといったところでしょう。

ニキシー管1本あたり流しても5mA程度なので、10本同時に点灯させることができます。

出力コンデンサ

最大出力の50mA負荷の時の、出力電圧波形です。173.2Vから175.6Vと、リップル電圧が2.4V程度あります。ニキシー管はリップルがひどくても表示に影響はほとんどありませんが、ちょっと大きい気がするので、出力のコンデンサC3を1uFから2.2uFに変更してみます。

リップル電圧が1.2V程度と半減しました。出力コンデンサは2.2uFにすることにします。

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もっと出力電圧を上げてみる

もっと高い電圧が生成できるかシミュレーションしてみます。出力電圧をこれまでの倍の350Vにしてみます。

R1 = R2 / ( Vout/1.25 -1 )

なので、R2に1M、Voutに350を代入します。

R1 = 1M / ( 350/1.25 -1 ) = 3.58 [kΩ]

となります。

R1を3.58kΩに書き換えて、RUNします。

結果がこちら。

先ほどの半分の25mA程度が最大出力となります。出力電力も9Wと同じですね。

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設計が完了しました

全ての部品のパラメータが決まりました。

入力電圧は12Vで、出力電圧175V・最大出力電流50mAの、ニキシー管用DCDCコンバータが設計できました。

効率も90%程度と、結構良いのではないでしょうか。

次回は、この回路を基板化したいと思います。続きはこちら👇👇👇

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