前回設計したMC34063昇圧回路をKiCADで基板にして発注したいと思います。
部品の決定
前回で、抵抗やコンデンサなどの部品のパラメータは決まりました。ダイオードとMOS-FETは、シミュレーション回路にあった部品をそのまま使っていました。入手できる似た特性の部品を探したいと思います。
ダイオード
シミュレーションではRF071L4Sが使われていました。
調べてみるとRF071L4Sは、400V・1Aの表面実装のファストリカバリーダイオードでした。これに代わる部品を探します。
シミュレーションでダイオードに流れる電流波形を見てみます。2.2A程度のピークを持った電流が流れていることがわかります。
DCDCコンバーターはニキシー管の175V以上に400V程度まで出せるようにしたいので、
- 耐圧 400V以上
- 電流 3A以上
- ファストリカバリーダーオード
の条件でダイオードを選びます。もし175Vまでで良ければ250V程度の耐圧でいいと思います。
かなり余裕を持った仕様ですが、600V・4AのMUR460というファストリカバリーダイオードが見つかりました。
MOS-FET
シミュレーションの回路では、BSC16DN25NS3というMOS-FETが使われています。
この部品も表面実装の部品でした。
このMOS-FETのドレイン電流の波形です。2A以上の電流でスイッチングしています。
先ほど600V耐圧のダイオードを選定したので、今回も
- 耐圧 600V以上
- 電流 4V以上
- ON抵抗がなるべく低い
というMOS-FETを探します。
樹脂でモールドされているタイプがいいので、STF13N60M2にしました。
ゲート電圧10Vで5.5A電流を流すことができます。
KiCadで基板を設計
回路図
回路は、シミュレーションをした回路とほぼ同じです。
ダイオードは先ほど選定したMUR460に、MOS-FETはSTF13N60M2にしました。
また、電圧を調整できるようにします。シミュレーションでは、1MΩと7.194kΩでした。抵抗には誤差があり、その誤差によって出力電圧にも誤差が生じます。特に1MΩは誤差1%の物を使っても最大±10kΩもの誤差があります。もう一つの抵抗の7.194kΩ以上の誤差です。そのため固定抵抗だけで175Vぴったりといったことはできません。
そこで、上記の回路のように、1MΩと5kΩのボリウム、3kΩとして、ある範囲で電圧を調整できるようにします。
出力電圧は、
Vout = 1.25 * ( 1 + R2 / R1 )
の式で求められ、
R2=1MΩ
R1= 5kΩ+3kΩ 〜 3kΩ
なので、出力電圧は
Vout = 157V 〜 418V
の間で可変できます。
400Vも不要な場合は、抵抗を4.7kΩにします。その場合の出力電圧は
Vout = 130V 〜 267V
とニキシー管にちょうど良い電圧範囲で調整が可能です。
アートワーク
DCDCコンバータでは、大電流が流れるパスをなるべく短くかつ太く配線するのがベストです。
スペースの関係上、電流のループが最短というわけにはいきませんでしたが、なるべく短い配線としました。
基板の設計が完了しました。
面付け
一般的に10cm x 10cmまでのサイズであれば、基板屋さんで安価に製造してもらえます。そこで、6つ面付けしました。
また、製造時に基板のどこかに製造番号も印刷されます。そのため、基板の下に捨て基板を付けておきました。捨て基板がついていると、ほとんどの場合製造番号は捨て基板に印刷され、メインの基板に製造番号が印刷されるのを回避できます。
JLCPCBに基板を発注
JLCPCBは安価にとても綺麗な基板を作ってくれる基板屋さんです。またブラックの基板がつや消しの黒なのも特徴です。今回は、つや消しの黒の基板にしたいので、JLCPCBに基板を発注します。
データの登録
ガーバーデータをアップロードすると、基板のイメージが表示され、基板のパラメータを設定するページになります。
今回の基板は面付け基板なので
「Delivery Format」を「Panel by Customer」にします。
縦3つ横2つ面付けされているので「Column」を3、「Row」を2と入力します。
上の図ではまだ色の変更をしていませんが、
「PCB Color」を「Black」に変更します。変更すると、上部の基板のイメージも黒になります。
また、JLCPCBは金メッキ基板も安価に作ってくれます。
「Surface Finish」を「ENIG-RoHS」にすると金メッキになります。
他はデフォルトのままで、OK。設定が完了しました。
右の青い「SAVE TO CART」をクリックしてカートに入れます。
支払い
「Secure Checkout」をクリックすると配達方法や支払いのページに移動します。
1.発送先の設定、2.発送方法の設定をします。
3.のSubmit OrderはデフォルトでPay Directlyになっていますが、私はいつもReview Before Paymentを選んでいます。この後JLCPCBでデータの確認作業が始まり、パラメータの設定ミスなどで場合によっては料金が変化します。「Review Before Payment」は確認が終わって金額が確定してから支払うことができます。
ContinueをクリックするとJLCPCBでデータの確認作業が始まり、ステータスが「Reviewing」になります。
確認が終わるとメールが届きます。今回は30分程度で確認作業が完了しました。Payをクリックして支払いに進みます。
クレジットカードかPayPalで支払いをします。
ステータスがIn Productionになり、製造が開始されました。
基板の発注完了
MC34063を使ったニキシー管用DCDCコンバータの基板の発注が完了しました。
届いたら組み立ててシミュレーターのように動作するか確かめてみたいと思います。
2020.10.17追加 続きはこちらです。
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