ファミコンはかなり古いゲーム機で、RFというアナログのテレビ放送波を使ってテレビと接続する方法です。そのため、今のテレビに接続して遊ぶことができません。
そこで、今のテレビに接続できるように、ファイコンの出力を黄色、赤、白のコネクタのビデオ出力に変換するFCAVというキットを開発しました。
おかげさまでよく売れて、在庫がなくなってきたので、少量追加で製造することにしました。
基板にはんだを印刷
左が元になる基板で、右がはんだを印刷するためのステンシルという版になります。
ターゲットとなる基板の周辺に、不要な基板を配置して、ターゲットの基板を固定します。その上にステンシルをのせ、基板とステンシルに開けた位置決め用の穴に画鋲を刺して、基板とステンシルの位置ずれなくぴったりと合わせます。
ステンシルの上部にはんだペーストを載せます。はんだペーストには鉛フリーの低融点はんだを使っています。
不要になったクレジットカードや会員カードなど、プラスチックのカードをスキージ代わりにして、はんだを印刷します。スキージの移動速度は1cm/秒くらいのスピードでしょうか。
ステンシルに開いた全ての穴に、はんだペーストがしっかりと充填されているのを確認して、ゆっくりとステンシルを取り外します。
綺麗にはんだペーストが印刷できました。
これを繰り返して、全ての基板にはんだを印刷します。
部品の実装
部品の実装には、ピンセットではなく電動バキュームピック HAKKO 394を使っています。
空気の力で吸着するので、小さい部品も簡単につまんで、目的の場所に置くことができます。
1608Mなどの小さな部品をピックするために、純正のノズルも販売されていますが、
ノズルがちょっと長いので、ノズルが短くて部品の位置決めがしやすいこれを使っています。
吸盤のついたノズルに交換することで、ICなどの大きな部品も吸着することができます。
こんな大きなコンデンサも吸着できます。コンデンサは円筒形をしていて、ピンセットではつまむことができないので、バキュームピックはとても便利です。
電動バキュームピック HAKKO 394のおかげで、ピンセットに比べ短時間に部品が実装できました。
リフロー
熱風で庫内を均一に加熱できる、コンベクションオーブンを使ってリフローしています。
いろいろなメーカーからコンベクションオーブンが販売されていますが、私はテスコム コンベクションオーブン TSF601を使っています。このオーブンは加熱の途中でも設定温度を変更することができます。このため、はんだペーストの温度プロファイルに沿うよう、庫内の温度を変更することができます。
また、K型熱電対温度計を庫内に設置しておいて、温度をモニターしています。
この温度計を見ながら、庫内の温度を調整します。
今回の基板は一気に4枚ずつリフローできました。
DIP部品の実装
リフローではんだ付けできるのは表面実装の部品だけで、コネクターなどDIP部品は別に手はんだで取り付けていきます。
こちらが、ビデオケーブルを接続する4極ミニジャックの基板です。ファミコンのケースに開いた既存の穴の高さに、コネクタの高さを合わせるため、別基板になっています。
これらコネクタをはんだ付けして、ファミコンビデオ変換基板FCAVの実装完了です。
動作チェック
CPLD 5M160を使った専用の治具で動作を確認します。
この治具を基板にセットし、映像と音声がモニターから出力されれば、動作チェックOKです。
完成した基板を、試しに1つだけファミコンに内蔵してみます。
FCAVは、ファミコンのRFユニットと交換するように改造します。写真のように本体内にFCAV基板が内蔵されます。
改造すると、ファミコンの背面はこうなります。「AC ADAPTER」はこれまで通りACアダプターを接続するジャックになっていて、「RF SWITCH」のところに4極ミニプラグのAVケーブルを接続するようになります。ファミコンのケースを改造しなくてもいいのも、このキットのいいところです。
テレビがないのでビデオキャプチャを使って、パソコンにつないで見ました。縦縞ノイズもなく綺麗な映像が映し出されました。コハクラフトオリジナルの素直な擬似ステレオも自然な感じに聞くことができます。
少量追加生産完了です
動作チェックも全てパスし、袋詰めして生産完了です。
ファミコンをテレビで遊びたいという方は、便利なので是非ご利用ください。
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