GPSモジュールを搭載し、いつでも正確な時間を把握できる電子ペーパーの制御基板を作りました。
はんだペーストの印刷
基板とステンシルはPCBWayで作ってもらいました。PCBWayでは注文時に指定することで、ステンシルを好きなサイズにカットしてもらえます。
注文時に「その他特殊加工」の欄に切り出したいサイズを記入しておけば、そのサイズでカットしてくれます。今回は基板のサイズが10cm角なので、ステンシルのサイズは15cm角にしました。これぐらいのサイズが作業性も良く保存も楽です。
また、基板とステンシルの四隅には1mmの穴が開いていて、画鋲を刺すことで基板とステンシルの位置合わせが簡単に正確にできるようにしてあります。ステンシルのデータ上で穴を開けておき、さらに注文時に「既存の基準点」を「レーザーが通る」にします。こうすることで、確実に穴を開けてもらえます。
画鋲を刺すと、このような状態になります。この画鋲を使った位置決めにより、0.4mmピッチや0.5mmピッチのICの小さいパッドでも、正確な位置にはんだペーストを印刷することができます。
はんだペーストにはCHIPQUIKの低融点鉛フリーはんだペーストTS391LT50を使っています。溶ける温度が138度と低いため、オーブンで簡単にリフローができます。また、TS391LT50は一般的な中華製はんだペーストよりも粒度が細かいため、精密な印刷が可能です。
はんだペーストを、不要になったクレジットカードなどのプラスチックのカードで印刷します。
中心にあるのは0.4mmピッチのQFPの部品ですが、とても綺麗にはんだペーストが印刷できています。
はんだペーストの印刷が完了しました。
部品の実装
私はピンセットではなく、電動バキュームピック HAKKO 394を使っています。
掃除機のように空気の吸い込む力で部品を吸着してくれます。ピンセットのように部品を両側から挟みこまないので、部品同士の間隔が狭くても部品を実装することができます。
また、テープから直接ピックアップすることで、ダイオードやLEDなど極性のある部品の場合に、常に決まった向きで部品をピックアップできるので、実装がとてもはかどります。
SMDテープフィーダーは、Thingiverseにあったデータを3Dプリンターで印刷しました。
HAKKO394は、小さな部品から大きな部品まで吸着することができます。
GPSモジュールはセラミックでできていて重いのですが、しっかり吸着できます。
今回は部品点数が多いので、部品の実装に丸1日かかってしまいました。もしピンセットで実装していたら終わらなかったでしょう。電動バキュームピックは作業効率をとても高めることができるので、是非おすすめです。
リフロー
ヒーターと熱風で加熱することができる、コンベクションオーブンでリフローします。
テスコムTSF601は、加熱の途中でも温度設定を変更できるので、庫内に取り付けておいた熱電対温度計の温度を見ながら、はんだペーストの温度プロファイルに合わせて、温度を調節することができます。今回は、基板に温まりにくいGPSモジュールが載っているので、指定された時間よりもゆっくりと長めに加熱しました。
温度設定を変えながら、約10分でリフロー完了です。食パン4枚入るテスコムTSF601は、庫内が広く、10cm角の基板を4枚同時にリフローができました。
3回リフローして、10枚分のリフローが完了しました。
実装のチェック
Eakinsのデジタル顕微鏡で実装できているか、確認します。
こちらが0.4mmピッチのQFPパッケージのICです。ブリッジやはんだボールなど発生せずに、綺麗に実装できています。
こちらは0.5mmピッチのQFNパッケージです。大丈夫そうですね。
0.5mmピッチのコネクタです。綺麗に実装できていますね。
動作チェック
目視でのチェックが終わったので、電源を投入して動作のチェックをしていきいます。
CPLDへ書き込み
この電子ペーパー制御基板では、パラレル制御の電子ペーパーを、SPI通信で描画することができるよう、マイコン(ESP32)と電子ペーパーの間にCPLDが入っています。このCPLDのチェックをしていきます。
まずは、JTAGでパソコンとCPLDを接続します。基板にはコネクタを取り付けるためのパターンはあるのですが、高さの制限があるためにコネクタは取り付けていません。そこでテストピンで接続します。テストピンには、P75-E2を使っています。
このようにJTAGのIDCコネクタにテストピンを差し込みます。
そして、テストピンをコネクタのランドの穴に接触させ、上から押さえつけます。このテストピンにはバネが内蔵してあるので、多少傾いてもきちんと接触してくれます。
Quartus PrimeでCPLDが認識できるかチェックしてみます。
正常にCPLDが認識できました。それではファームウェアを書き込んでみます。
正常に書き込めました。これでCPLDは正常に機能していることがわかりました。
ESP32へ書き込み
ボードに搭載されたESP32に、Arduino IDEでGPS時計のプログラムを書き込みます。正常に書き込にができ、シリアルモニターにGPSで取得された時刻情報が表示されました。ESP32、GPS共に機能しました。さらに電子ペーパー用のDCDCコンバータとも通信ができ、電子ペーパーに供給する全ての電源電圧が正常に生成されることも確認できました。
電子ペーパのテスト
ボードの全ての機能が正常に動作していることがわかったので、電子ペーパーをつないで最終テストです。無事にGPSで受信した時刻が、電子ペーパーに表示されました。
これで一通りの動作チェックができ、全て正常に動作することがわかりました。
チェック完了
これら一連の動作チェックを経て、10枚のGPS搭載電子ペーパー制御基板が完成しました。
つづきはこちらです。
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