電池で動作するESP32-DevKitCが欲しい
ESP32-DevkitCはESP32を手軽に使うことができるボードです。ESP32-DevkitCはUSB電源で動作させるか、外部から5V程度の電気を供給して動作させます。バッテリーで動作させる場合、モバイルバッテリーなどを使うことになるのですが、モバイルバッテリーでなく、乾電池や充電電池など2,3本で動作したらいいなぁと思うことがよくあります。
そこで、乾電池や充電電池2,3本で動作する、ESP32-DevKitCを作ろうと思います。
ESP32の電源電圧範囲
ESP32-WROOM-32のデータシートによると、電源電圧は標準が3.3Vで、範囲としては3Vから3.6Vとなっています。
乾電池で動作させると
電池で動作させるとします。乾電池2本の場合は電池が新品の状態で3Vなので、動作開始後、かなり早い段階で3Vを下回ってしまいます。そのため、極めて短い時間しかESP32を動作させることができません。
乾電池3本の場合は初期電圧が4.5Vとなります。ESP32の最大電圧が3.6Vなので、電圧が超過しています。そこで3.3Vに変換するために、お手軽なレギュレータを利用することを考えます。レギュレータは出力電圧に対して、入力電圧が少なくとも0.6V以上必要なので、電池の電圧が4Vを下回ると利用できません。そのため、初期電圧から0.5V程度電圧が低下するだけで、ESP32は動作しなくなってしまいます。乾電池の終止電圧を1Vとすると3本で3Vなので、4Vまでしか動作しないとなると、かなりエネルギーを残した状態でESP32が動作しなくなることになります。
乾電池を4本にすれば6Vとなるので、レギュレータを利用しても電池を使い切る4Vまで、動作させることができそうです。
乾電池4本では電池のエネルギーを有効に使えそうですが、2本や3本ではそれほど長く動作させることができないことがわかりました。
充電電池で動作させると
充電電池の初期電圧は1.2V程度です。3本使うと3.6Vです。ここからESP32が動作が停止する3Vまで0.6Vしかありません。充電電池の終止電圧は1本あたり0.8V程度なので、3本で2.4V程度までは使いたいところですが、半分以上エネルギーを残してESP32は動作しなくなってしまいます。
4本使うと4.8Vです。レギュレータを利用して3.3Vに変換する必要があるので、先ほど説明した通り入力電圧は4V程度までしか利用できません。終止電圧の3.2V程度までは使いたいところですが、初期の電圧から0.8V程度低下した4V程度でESP32は動作しなくなってしまいます。
このため、充電電池でも、それほど長く動作させることができません。
電池でも充電電池でも動作させるには
乾電池や充電電池では、電池のエネルギーを十分に使い切る前に、ESP32が動作しなくなってしまうことがわかりました。
そこでDCDCコンバータの利用を検討してみます。DCDCコンバータは、コイルにエネルギーを一旦貯めることで、入力電圧に対して出力電圧を上げたり下げたりすることができる回路です。
電圧を上げるタイプを昇圧型、電圧を下げるタイプを降圧型のDCDCコンバータと言います。ちょっと変わって昇降圧型という回路もあり、目的の電圧より入力電圧が低くても高くても良い回路です。3.3Vに対して電池の電圧が低くても高くても良いので、今回のように2,3本で動作させるにはぴったりの回路となります。
無料のツールで電源回路設計
昇降圧DCDCコンバータの回路は、昇圧型と降圧型を組み合わさった複雑な回路なのですが、今はとっても便利なICがあって、お気軽に作ることができます。
しかも、回路設計やシミュレーションを自動で行ってくれる便利なツールがありました。
TIのWEBENCH POWER DESIGNERです。Webで全てができてしまします。
このページで、入力電圧範囲、出力電圧、電流を指定して「VIEW DESIGNS」をクリックすると、
このように、TIのICを使った昇降圧DCDCコンバータの回路一覧が表示されます。この中から、好きな回路を選べば設計完了です。なんて素晴らしいのでしょう。
今回は仕様として
- 最低入力電圧1.8V
- 最大入力電圧5.5V
- 出力電圧3.3V
- 最大出力電流0.6A
にしてみました。
入力の最低電圧は、DCDCコンバータICの最低動作電圧が1.8Vの物が多いので、1.8Vとしています。乾電池、充電電池2本の終止電圧に近い値です。また最大電圧は、USBのバスパワーでも動いて欲しいのでちょっと高く5.5Vとしました。
出力電圧はESP32に合わせて3.3V。電流はデータシートに最低0.5Aとあったので、ちょっと大きく0.6Aにしました。
得られた回路図の中から、好みの物を選んで「SIMULATE」をクリックすると、シミュレーションのページに移動し、応答波形をシミュレーションすることもできます。
このページで、電源ON時の過渡応答や、負荷の変動、入力電圧の変動時の応答などをみることができます。Spiceにモデルを取り込んで、回路図を書いて...という作業がなく、応答波形が見れるのはとても便利です。私の環境ではパラメータを変更することができなかったのですが、それができれば完璧ですね。
昇降圧DCDCコンバータの回路設計完了
というわけで、TIのWEBENCH POWER DESIGNERのおかげで、面倒なDCDCコンバータの回路設計が、入出力の条件設定だけででき上がってしまいました。
このDCDCコンバータの回路を組み込んで、乾電池や充電電池など2,3本で動作する、ESP32-DevKitCを作って行こうと思います。
2021.4.4 追加 つづきはこちら
追加終わり
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