以前、小型の大電流トランスを入手したので大電流高電圧DCDCができるか実験しましたが、失敗していました。
今回は、日本メーカーの昇圧トランスを中国のAliexpressで入手したので、このトランスを使って大電流高電圧DCDCができるのか実験してみたいと思います。
先に言っておくと、日本のメーカーのトランスですが、Aliexpressで入手したというところに落とし穴があって、なかなか面白い実験となりました。
昇圧トランス
こちらが入手したトランスです。
日本のメーカーなのでデータシートも公開されています。巻線比は1:18、極性はドットが1番ピンと4番ピンにあるので同相になっています。この情報を利用して、DCDCの回路を作って行こうと思います。
NixieDCDCを改造
以前改造に使ったニキシー管用の高電圧発生DCDC「NixieDCDC」をベースに改造したいと思います。
これに実装されているトランスをホットエアーで加熱して取り外し、Aliexpressで購入したトランスを接続します。
空中配線になってしまっていますが、実験なのでこれで行ってみます。
実験
おや?電源を入れても5Vしか出力されません。入力電圧を変化させると、出力電圧も同じように変化します。DCDCコンバータが正常に動作しておらず、入力電圧が、出力にそのまま出てきているようです。
何がおかしいのか、原因がわかりませんでした。
XL6009DCDCコンバータモジュール
次に、前回も改造に使ったAmazonなどで安価に購入できるXL6009を搭載した、昇圧型のDCDCコンバータモジュールを改造してみます。
トランスを交換
前回改造して動かなかった、このモジュールのトランスを交換します。
トランスを交換してみまました。
結果は、
やはりだめ。5Vしか出力されません。入力電圧を変えると出力電圧も同じく変化します。NixieDCDCと同じ症状です。
制御ICを交換
前回の実験で、制御ICが壊れたのかもしれません。ホットエアーを使って、制御ICを取り外し交換してみます。
ホットエアーは、多ピンの表面実装部品を取り外すのに、とても便利です。
新しい制御ICをはんだ付けします。このモジュールのほとんどの部品は、別の物と交換されてしまい、原型を留めていません。
結果は、
やはりだめ。5Vしか出力されません。入力電圧を変えると出力電圧も同じく変化します。
制御ICの問題でもありませんでした。
トランスの仕様を疑う
ここまで、いろいろやってきて、回路側には問題がなさそうです。そこでトランスの仕様がデータシートとは違うのではないかと疑ってみます。
トランスの1次側に電源とオシロスコープをつなぎ、2次側にもオシロスコープをつないで、巻線の仕様を調べてみます。
1次側に1Vのパルスを印加した時の波形が、上の写真です。黄色が1次側、水色が2次側です。見事に逆相です。巻線比も1:10のようです。
データシートと比べてみます。
実際 巻線比1:10 巻き方:逆相
いろいろ違うじゃないですか。巻き方が逆相というのは致命的です。それではDCDCコンバータが正常に昇圧しません。
やり直し
原因がわかったところで、NixieDCDCに戻り、トランスを実験結果に合わせて、配線し直します。
電源を入れると、187Vに昇圧された電圧が発生しました!!動作しました。
原因は、データシートと届いた部品の仕様が全く違かったということでした。
負荷テスト
正常に昇圧動作をすることがわかったので、どの程度の負荷まで耐えられるのかを、実験します。220kΩの抵抗を1つ1つ負荷に追加しながら、入出力の電圧と電流を調べてみます。
出力電流が8mAくらいで、トランスがかなり発熱して触ると「熱い!」ってなる感じです。多分限界を過ぎています。
わかりやすいようにグラフ化してみましょう。
出力の電流電圧特性
6mA以上程度流すと、150Vまで低下してしまいました。160V程度をキープできるのは6mA程度までのようです。
変換効率
出力電流と、その時の変換効率を計算してみました。約60%から70%と、このタイプとしては結構いい感じではないでしょうか。
結果
このトランスでは、ニキシー管に使うには出力電流は6mA程度まで使えることがわかりました。NixieDCDCが5mAだったので、それほど大電流になるというわけではないですね。ただNixieDCDCの変換効率が約50%程度だったので、それに比べたら効率がかなり良くなります。
データシートと仕様が全然違いましたが、使えるトランスであることがわかりました。
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