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フルスペクトラム高演色LEDをAC100Vで点灯させるための定電流LEDドライバの設計

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フルスペクトラムLED

太陽光のようなフルスペクトラムの光を発生させるLEDを入手しました。このLEDは複数のLEDチップが1つのパッケージに入っているCOBのタイプで、光らせるためには34〜38Vの電圧が必要です。

このLEDをコンセントの電力で光らせられるようにするための、定電流LEDドライバ回路を設計したいと思います。

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ACDC定電流LEDドライバIC

BP9916Bは以前ダイソーのLED蛍光灯にも使われていた、入力電圧が500Vまで対応できる降圧型の定電流LEDドライバICです。データシートはこちら

使い方はとてもシンプルです。CSピンにつないだ抵抗値によって、LEDに流れる電流を制限することができます。

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回路設計

抵抗値の決定

電流を設定する抵抗の値を決めます。

データシートより抵抗RCSは

として求められます。LED電流をフルスペクトラムLEDの定格電流の150mAに設定したいところですが、

と、推奨動作電流としては120mAが最大になっています。このため、ILED = 120mAとして設計します。

IPK = 2 * ILED = 2 * 120mA = 240[mA]

RCS = 600 / IPK = 600 / 240 = 2.5[Ω]

ということで、抵抗値は2.5Ωとなります。

抵抗での電力損失は

W = E ^ 2 / R = 0.6 ^2 / 2.5 = 0.144[W]

です。

このため、抵抗は2.5Ω、許容損失1/4W(0.25W)の抵抗を使うことにします。

インダクタ値の決定

インダクタは、DCDCコンバータの発振周波数に影響を与えます。

ton,toffは上記の式で決定されます。またton,toffの時間には以下のような制限があります。

この制限に入るようにインダクタンスLを設定する必要があります。

ここで、とりあえずLを1mHとして計算してみます。

Ipk = 240mA, VIN = 90V, VLED = 38Vです。 AC100Vを全波整流した後に平滑化すると、得られる電圧は平均値となります。平均値の式より 2*sqrt(2)*100/π=90で、VINは90Vとなります。

Ton = ( L * Ipk ) / ( VIN - VLED ) = ( 0.001 * 0.24 ) / ( 90 - 38 ) = 4.62[us]

制限は Ton < 50[us]なので、Tonの制限はクリアしています。

Toff = L * Ipk / VLED = 0.001 * 0.24 / 38 = 6.32[us]

制限は 2.5[us] < Toff < 300[us]なので、Toffも制限をクリアしています。

インダクタンスLを1mHとした時の発振周波数は

f = 1 / ( Ton + Toff ) = 1 / ( 4.62u + 6.32u ) = 91407 ≒ 91[kHz]

となりました。

また、フルスペクトラムLEDを2個直列にした場合は、どうなのか計算してみます。

Ipk = 240mA, VIN = 90V, VLED = 38*2Vなので、

Ton = ( L * Ipk ) / ( VIN - VLED ) = ( 0.001 * 0.24 ) / ( 90 - 38*2 ) = 17.14[us] ( Ton < 50[us] )

Toff = L * Ipk / VLED = 0.001 * 0.24 / ( 38*2 ) = 3.16[us] ( 2.5[us] < Toff < 300[us] )

f = 1 / ( Ton + Toff ) = 1 / ( 17.14u + 3.16u ) = 49261 ≒ 49[kHz]

となりました。TonToffともに条件に入っています。また、発振周波数も可聴周波数より高いので、コイル鳴きは聞こえないでしょう。

フルスペクトラムLED1個でも2個直列でも、正常に動作することがわかりました。

出力コンデンサの決定

出力コンデンサは出力電圧のリップルに影響を与えます。リップルが大きいとLEDの明るさが高速に変化して気になるかもしれません。

出力電圧のリップル電圧は以下の式で求められます。

Tech Webより

ΔIL = 0.24A、電解コンデンサのESR=1Ω、コンデンサの容量4.7uF、Focs=49kHzとすると、

ΔV = 0.24 * ( 1 + 1 / ( 8 * 4.7u * 49k ) ) = 0.37 V

4.7uFの電解コンデンサを使うと、リップルは0.37Vとなりました。安定化電源としてはリップルが大きいですが、LEDを光らせるのであれば、まぁいいのではないでしょうか。

入力コンデンサの決定

入力コンデンサは、出力のW数に応じて設定します。

TechWebより

入力電圧は100V、フルスペクトラムLED2個直列の時、VLED=38*2V ILED=120mAなので、Pout= 38*2*0.12 = 9.12[W]

C > 2 * Pout = 19.24uF

なので、20uF以上になります。

入力部のEMI対策

DCDCコンバータのスイッチングノイズが、コンセント側へ漏洩するのを防ぐために、π型のフィルタをブリッジダイオードの後に挿入します。

Cin1 + Cin2 > 20uFである必要があるので、Cin1とCin2をそれぞれ15uFとします。

Lin1はBP9916Bのインダクタと同じものを使うことにして、1mHとしてみます。

インダクタの直列抵抗はデータシートより1.8Ω、コンデンサのESRは1Ωとし、周波数特性をシミュレーションしてみました。

LEDドライバのスイッチング周波数49kHzで、減衰率は約-50dBとなりました。-60dBくらい欲しかったですが、まあいいとします。

過電流保護

ダイソーのLED蛍光灯やIKEAのLED電球には、過電流保護としてヒューズ抵抗が入っていました。今回は、リセッタブルヒューズを使おうと思います。

LEDドライバのインダクタに流れるピーク電流が240mAなので、Holdが250mAのリセッタブルヒューズを入れることにします。

リセッタブルヒューズ自体の抵抗値が1.3〜3.8Ω程度あるので、電源が供給された時のラッシュ電流を軽減する目的としてもいい感じなのではないでしょうか。

過電圧保護

雷サージなど異常に高い電圧が電源に混入した場合でも、LEDドライバが故障しないように、バリスタを入れます。動作電圧がAC100V以上で、クランピング電圧がドライバICの最大定格である500V以下の物を選定します。

今回は、バリスタ電圧200Vの物にしました。クランピング電圧は340Vなので、ICが壊れることはないでしょう。

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回路図完成

フルスペクトラムLEDを、コンセントの電力で光らせるための回路設計が完了しました。

基板を設計してJLCPCBに発注したいと思います。