最初のロットが全て売り切れてしまったので、ちょっと改良した基板をPCBWayに発注しました。
電池2,3本で動作するESP32-DevKitC互換機
「電池2,3本で動作するESP32-DevKitC互換機」は、ピン配置や基板サイズはESP32-DevKitCそのままに、電源に昇降圧DCDCコンバータを採用し、3Vから5.5V(安定化電源で2.1Vまで動作しました)の電源電圧するようにしたESP32-DevKitC互換機です。3V程度でも動作するために、乾電池2,3本や充電電池3,4本でESP32を動作させることができます。
郵便受けに郵便が届いたことをメールでお知らせしてくれる装置に、このボードを使っており、太陽電池とエネループ3本を電源として、これまで約半年間安定して動作しています。
バグの修正
この基板の回路には1カ所バグがあって、改修のためパタンカットとはんだでブリッジさせる必要がありました。このバグの修正をしました。
ちょっと改良
端面スルーホールの大型化
「電池2,3本で動作するESP32-DevKitC互換機」は、この基板をモジュールとして、別の基板に直接実装できるように、基板の側面に端面スルーホール(Castellated Holes)を作っています。
端面スルーホールは上の図のように、スルーホールの穴の上に基板外形のエッジカットラインを設定することと、
注文時に端面スルーホールのオプションにチェックを入れることで、作ることができます。
前回は穴の中心にエッジカットのラインを配置し、下の写真のような端面スルーホールができました。
ESP32のモジュールの端面スルーホールは下の写真のようになっています。
私が作った基板の端面スルーホールよりも、ESP32はメッキの部分の幅が広くなっています。基板に直接実装する場合、メッキの部分が広い方がよりしっかりとはんだが付くので、装置の信頼性が上がるのではと思います。
そこでESP32のように、メッキの部分を広げる改良を行います。
スルーホールの直径を大きくすれば、それだけ端面スルーホールを広げることができます。しかし、隣に開いたピンヘッダの穴と近づきすぎて、穴がつながってしまいます。
そこで、スルーホールの直径を大きくすると共に、スルーホールの中心位置を基板外形より外側にずらしました。これで、ESP32のように広い、端面スルーホールになります。
できたデータを6つ面付けして、基板の四隅に穴を開けておきます。これは、メタルマスクと基板との位置合わせを簡単に正確にするためです。詳しくはこちらをご覧ください。
ガーバーデータに出力して、zipで圧縮してPCBWayに発注します。
PCBWayに発注
項目の設定
PABWayのサイトで、「今すぐお見積もり」をクリック。
面付けした基板なので、「基板の種類」を「面付け」に変更します。私が面付けした基板を発注するのによくPCBWayを使う理由が、その下の「X-out Allowance in Panel」の設定項目があるためです。
基板は製造上、必ず不良が発生してしまいます。そのため、全ての基板に対して基板製造後に導通チェックが行われ、良品か不良品か試験されます。面付けされてない基板の場合は、試験にパスした基板だけが出荷されます。
面付けした基板の場合、一部に製造不良があっても、面付けされた他の子基板は良品となります。例えば、今回は6つ面付けしたので、その中の1つが不良だとしても、他の5つは良品です。「X-out Allowance in Panel」は、面付けされた子基板に不良が発生しても、その基板の出荷を認めるかどうかの設定です。一般的に中国の基板メーカーではこの設定項目がなく、子基板に不良があった場合、その不良の子基板にマジックでバツ印が描かれて出荷されます。
今回の基板では、なるべく多くの基板を作りたいため、面付けされた子基板に不良が混ざって欲しくありません。そのため、「X-out Allowance in Panel」を「いいえ」に設定します。その代わり、料金がちょっと高くなってしまいます。
あとは、
- 「基板のサイズ」を面付けされた基板のサイズ 「148 x 100mm 」に設定
- 「基板の色」を「黒」に
- 端子を金メッキにしたいので、「表面処理」を「無電解金フラッシュ」に
- 追加オプションで、「端面スルーホール」にチェック
を設定します。
はんだペーストを印刷するために使うメタルマスクも一緒に注文します。私の場合は「枠なしメタルマスク」にしています。
基板の表面にしか部品を実装しないので、「メタルマスク サイド」を「表面のみ」にします。
私の場合、画鋲を使って基板とメタルマスクとの位置決めできるようにデータを作っています。その穴が確実に開いて欲しいので、「既存の基準点」を「レーザーが通る」にします。基板とメタルマスクとを画鋲を使って位置決めするデータの作り方はこちらを参照してください。
このままでは、メタルマスクのサイズが190x290mmととても大きな物が届いてしまいます。メタルマスクは基板より一回り大きければ十分なので、「その他特殊加工」の欄に、メタルマスクをカットしてもらうように、カットするサイズを書いておきます。日本語でも通じるようですが、相手にわかりやすいように英語も併記しました。
ここまで設定したら、カートに追加します。
データのアップロード
「ファイルの追加」をクリックします。
「ガーバーファイルを追加」をクリックして、zip圧縮したガーバーデータをアップロードします。
アップロードができたら、「今すぐ注文する」をクリックします。
PCBWayで、ガーバーデータが製造可能かどうかの確認(レビュー)が行われます。PCBWayはこのレビューの時間が一般的な中国の基板メーカーよりも劇的に早く、数分で終わります。
レビューが終わると、メールでお知らせしてくれます。
Failed
今回はデータが仕様を満たしていなかったっりして、やりとりが発生したのでご紹介します。
データがRS-274X形式でない
アップロードしたファイルは、レビューの結果Failedになってしまいました。「RS-274X形式でアップロードしてください」というコメントでした。
KicadでDRCチェックをパスもしていて、出力されたガーバーファイルを、全てまとめてzipファイルにしているので、データは正常なはずなのです。2回最初からやり直したのですが、同様にFailedになりました。
原因は「拡張X2フォーマットを使用」にチェックが入っていることでした。ここのチェックを外してガーバーファイルを生成することで、「RS-274X形式でアップロードしてください」という問題は解決しました。
スルーホールの穴の輪郭と基板外形線との距離
問題が解決したと思ったら次はPCBWayからこんなメールが届きました。
端面スルーホールを広くするために、スルーホールの位置を基板の外側へ少しずらしたのですが、ずらし過ぎて製造上の仕様を満たさなくなってしまったようです。
穴の位置を内側へ0.127mmずらし、0.45mm以上離したデータに修正して、メールに添付し返信しました。
塗り潰しされていないよ
この指摘はとても、とても、とっても嬉しかったです。アップロードしたデータは、なぜか面付けした1つだけ、GNDベタの塗り潰しがされていませんでした。このまま製造されてしまったら、6つのモジュールのうち1つだけ、GNDがつながっていないため正常に動作しなかったでしょう。部品を実装してからでは、不良の問題を究明するのに膨大な時間を費やすことになったと思います。
アップロードされたデータを、そのまま製造せずに、きちんと確認してくれるのは、とてもありがたいです。以前もPCBWayは、私のミスを指摘してくれて、問題が発生することを回避することができました。
ちょっと脱線しますが、昨年末に企画したクリスマスリースキットもPCBWayで製造してもらいました。当初は別の基板メーカーに製造を依頼したのですが、デザインが複雑過ぎるという理由で断られてしまいました。何度かデザインを簡略化し、再依頼してみましたがレビューをパスすることができませんでした。そこでPCBWayにお願いしてみたところ、無事に製造してくれました。
PCBWayは、とてもいいサービスを提供してくれているなと感じます。
今回は、私がガーバーデータを確認していなかったために、このようなミスが発生してしまいました。これからは、アップロードする前に必ずガーバーデータを確認しようと思います。macだとなかなかいいガーバービュアーがないので、私はgervbという古いソフトを使っています。
いろいろ問題がありましたが、ようやくガーバーデータがレビューをパスし、「支払い待ち」になりました。「チェックアウトに進む」をクリックし、支払い手続きをすれば、発注完了です。
発注完了
注文が完了し、製造が開始されました。
今回は、私のミスでいろいろ問題が発生しましたが、PCBWayのスタッフの親切な指摘のおかげで、無事に正常な基板を発注することができました。
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