ファミコンは昔の物なので、今のテレビにつなげて遊ぶことができません。そこで、今のテレビでも遊べるよう改造するための基板を作っています。
ファミコンがテレビに映る仕組み
ファミコン放送局
ファミコンが販売された頃、テレビはアナログ放送でした。そして、テレビに映像と音声の入力端子がついているのも珍しい時代でした。
そのため、ファミコンのビデオ信号は、アナログ放送の電波と同じ信号(RF信号)に変換して、テレビチャンネルの1つ、言い換えれば放送局となっていました。そのRF信号を、アンテナで受信したテレビ放送の信号とミックスしてテレビに入力し、テレビのチャンネルをファミコン放送局のチャンネルに合わせることで、ゲーム画面をテレビに映していました。
現在、アナログ放送は終了しデジタル放送に移行しています。今ではアナログ放送を受信できるテレビはほぼありません。そのため今のテレビにファミコンをつないで、ゲームすることはできなくなってしまいました。
テレビへつなぐための改造方法
ファミコンのメイン基板からは、映像信号と音声信号が出ています。今のテレビには、まだ映像入力端子(黄色い端子)と音声入力端子(白と赤い端子)が付いています。ファミコンメイン基板から出力されている映像信号と音声信号を、テレビの映像入力信号・音声信号のレベルに変換することで、ファミコンをテレビに映すことができるようになります。
上の図は、今のテレビにファミコンをつなげるための一般的な改造方法です。ファミコンメイン基板から出力されている映像信号は、テレビの映像入力に直接つないでしまうと、信号レベルが不足するため、ビデオアンプを使って本来の映像信号のレベルに合わせます。音声信号は、場合によっては、直接テレビの音声信号へつないでも問題ありません。
これが最低限のテレビへ接続するための改造になります。
ファミコンの映像信号はノイズが多い
2種類のノイズ
これは過去に行った、映像ノイズがどこからやってくるのかを調べた時のドラゴンクエストのオープニング画面です。ノイズが分かりやすいように、明るさやコントラストを調整しています。
一番左が、一般的な方法でテレビ出力用に改造した場合の画面です。ノイズには斜め縞のノイズと、縦縞のノイズの2種類があることがわかりました。
中央1と右2は、ノイズ対策のために、CPUの周辺にバイパスコンデンサを接続した場合の画像です。1は1カ所、2は2カ所に取り付けました。バイパスコンデンサをCPU周辺に取り付けることによって、斜めの縞のノイズがほぼ消えることがわかりました。縦縞も軽減しています。
縦縞は回路から
ファミコンの映像を生成しているPPUというICの映像出力ピンを、指で触ってみます。
すると、縦縞のノイズが一気に増えました。縦縞のノイズは、映像信号の配線の周辺にある、デジタル信号が流れている配線から混入している疑いが高まりました。
ファミコンの音声は2チャンネル
ファミコンには複数の音源が入っており、それらがAUX A、AUX Bと2つのチャンネルとして出力されています。この2つの音声信号をファミコンのメイン基板の中でミックスしてモノラルの音声信号に変換しています。
AUX Aは、2チャンネルの矩形波の音源が接続されていて、ファミコン特有のピコピコ音が出ます。
AUX Bは、三角波、ノイズ、ADPCMの3種類の音源が接続されていて、主にベースの音やドラムの音などが出ます。
これらの2つのチャンネルをミックスせずに、そのまま音声信号の右チャンネルと左チャンネルに割り当てて、ファミコンをステレオっぽく改造することができます。
それではお聞きください。任天堂で、スーパーマリオブラザーズ3。
ステレオっぽく聞こえますね。
こちらはMOTHERです。
こちらはアイスクライマーです。
ステレオっぽく聞こえますが、右と左で全然違う音がするので、聞いていてだんだん疲れてきませんか?
また、F-1レースや、ゴルフ、エキサイトバイクなど、AUX AとAUX B両方の音源を同時に使っていないゲームもあります。このようなゲームの場合、右か左の片方からしか音が出ません。
このため、この方法によるステレオ化は、聞いていてちょっと不自然に聞こえてしまいます。
ノイズ軽減&それっぽいステレオ化
フル機能
これまでの調査結果を元に、
映像信号のノイズ軽減のため
- PPUにバイパスコンデンサの追加
- PPUの映像出力ピンから直接シールド線で映像信号を引き出す
- 映像信号波形の鈍り(変形)を防ぐためSD画質ではなくHD対応のビデオアンプを使う
の3つの対応をし
音声信号のそれっぽいステレオ化のため
- CPUのAUX A,Bピンから音声信号を直接シールド線で音声信号を引き出す
- AUX A,Bと拡張音源の音をいい感じにミックスしてステレオ化
- いい感じステレオからモノラルまでステレオ具合をユーザーがシームレスに調整
機能を盛り込んで、ファミコンのビデオ変換基板を作りました。
簡易機能
先ほどの性能を得るためには、ICのピンから信号を直接取り出すなど、改造が少し難しく、面倒です。
そこで、メイン基板と変換基板との、映像、音声、電源、GNDの4本だけつなげば、手っ取り早く改造が完了することができるようにも基板を設計しました。
映像信号はメイン基板の中でデジタル信号の隣を通ってくるため、ちょっと縦縞が残ってしまいますが、縞ノイズ低減コンデンサのおかげで、斜め縞はほぼなく、縦縞は少し残る程度です。音声信号は、メイン基板の中ですでにミックスされているため、モノラル専用になります。
基板の設計
というわけで、これまでの機能を盛り込んだ基板を設計しました。基板のサイズは、ファミコンの中に入っているRF変換基板と全く同じです。
RF変換基板を取り外し、空いたスペースにこの基板を収納します。
ファミコン本体の改造も不要です。このように、一番右のRF出力の部分にビデオ&オーディオケーブルのコネクタがあり、TV-GAMEスイッチの部分にステレオ具合を調整するボリウムがあります。一番左のACアダプタのコネクタはそのまま、これまで通りのACアダプタが使えます。
基板の発注
今回は1枚の基板に2つ基板を面付けしたので、面付けされた基板両方とも良品であることを指定することができるPCBWayに基板を発注します。
面付けした基板に不良があることを許可する「X-out Allowance in Panel」を「いいえ」に設定します。他はデフォルトのままです。
メタルマスクも一緒に作ってもらいます。標準サイズは190mm x 290mmととても大きくて収納のスペースが必要なので、100mm x 100mm にカットしてもらうよう「その他特殊加工」の欄に書いておきます。
全ての設定が終わったら、カートに入れます。
ファーバーファイルをアップロードするウィンドウが表示にされるので、zipで圧縮したガーバーファイルをアップロードします。
PCBWayで基板データの確認(レビュー)が始まります。PCBWayはこのデータの確認が、早いと数分で終わってしまいます。他の基板せメーカーでは数10分から数時間かかるので、急いでいる時はPCBWayがいいと思います。
基板のレビューが終わると、メールで知らせてくれるとともに、支払いが可能になります。
都合の良い支払い方法を選択し、お好みの配達業者を選んで発注完了です。
「注文の状況」が「製作中」になりました。後は基板が届くのを待つだけです。
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