IGBTを使ってキセノン管の放電時間を調節することで、フラッシュの明るさとタイミングをマイコンから制御できるようになりました。
IGBTを使ってキセノン管を光らせるための基礎実験についてはこちらをご覧ください。
このIGBTを使ったフラッシュ回路をKiCadで基板にして、JLCPCBに発注していました。発注の時の記事はこちらをご覧ください。
発注していた基板が届いたので、組み立てて実験してみます。
基板の組み立て
フラッシュが白なので、白の基板にしてみました。
シルクも綺麗に印刷されています。
今回はキセノン管に大電流が流れるために、基板の銅箔の厚みを一般的な厚みの2倍にしてみました。そのためか、なんだか基板が重く感じます。またベタグランドがアルミ基板のように冷たいです。銅箔の厚みが2倍になると、普通の基板とは全然違います。
どんどん熱が逃げてしまうので、なかなかはんだ付けが溶けず、部品の実装にとても時間がかかりました。
High Voltage DCDCの実装
キセノン管をフラッシュさせるためには、250Vから300V程度の高電圧が必要です。そのためのDCDCコンバータを作ります。
過去に作った回路の部品を変更して、300Vまで昇圧できるようにします。JLCPCBで基板を作ってもらった時の記事はこちらです。
JLCPCBでメタルマスクを作ってもらうと、KiCadのライブラリでは開口部が長方形なのですが、1608以上のサイズのコンデンサや抵抗は、開口部の形状を[ ]のようにカギカッコ状に修正してくれます。これのおかげで、部品の下のはんだペーストの量が適度に軽減され、リフロー時の品質が上がります。他の基板製造メーカーにないいいサービスだと思います。
はんだペーストの印刷
ダンボールの上に基板を置きます。
メタルマスクを上に乗せ、予め開けておいた穴に画鋲をさして、基板とメタルマスクの位置合わせと固定をします。この画鋲を使った位置合わせのデータの作り方はこちらをご覧ください。
はんだペーストを印刷する際のスキージには、以前購入してとても使い心地の良かった拓森のパテナイフを使います。
この感激する程素晴らしいパテナイフについて、詳しくはこちらをご覧ください。
6 Pcs Putty Knives Set Scraper Blade Kit with Anti-slip Plastic Handle DIY Tool
拓森パテナイフは6種類のいろいろな幅がセットになっています。基板の半分だけ実装したいので、今回は幅が5cmの物を選びました。
奥側に置いたはんだペーストを、拓森パテナイフで手前に引き寄せて、はんだペーストを印刷していきます。このパテナイフのしなりが良いんです。
以前はプラスチックでできた会員証やクレジットカードで印刷していたのですが、比べ物のならないほど、左右どの場所も均一な圧力で印刷できて、メタルマスクにペーストが残りません。
ムラなく一定の圧力ではんだペーストが印刷できています。
はんだペーストが綺麗に印刷できました。
部品の実装
部品の実装にはピンセットではなく、電動バキュームピック 吸着ピンセット HAKKO394を使っています。
HAKKO394は、掃除機のように部品を吸着して使います。SMD部品が収められたテープから、直接部品をピックアップすることで、毎回必ず同じ向きに部品を吸着できます。上の写真の例では、ICの1番ピンが必ず左上になるように吸着されます。
基板の向きを、吸着される部品の向きを同じくしておくことで、吸着と配置がとてもスムーズに行えます。
面付けされた基板の場合、同じ部品を何度も実装するので、この方法によって部品の向きを変更する必要がなくなり、実装時間がかなり短縮できます。
ノズルを変えると小さな抵抗も吸着できます。
あっという間に5つの基板に実装ができました。
リフロー
熱風で庫内を均一に加熱するコンベクションオーブンでリフローします。
K型熱電対温度計をオーブンの中に入れておいて、はんだペーストの温度プロファイルに近くなるよう、温度調節していきます。
私が使っているのは、低融点鉛フリーはんだペーストで、上のような温度プロファイルでリフローします。90度→130度→140度→165度といった具合に温度を変化させます。
リフローが終わったら扇風機で冷却。
リフローが完了しました。
動作チェック
5Vを供給して高電圧が生成されるか、1つ1つチェックしていきます。
ジグに使っているテストピンには、P75-E2を使っています。
このテストピンに、P75-3Wというプローブを差し込んで使います。
テストピンの中にバネが入っていて、車のダンパーのように伸び縮みするので、ジグが多少傾いていても安定して対象に接触します。
ボリウムを調節して出力電圧を上げていきます。最終的に300Vに設定しました。
300V発生する、High Voltage DCDCが完成しました。
合体
High Voltage DCDCにピンヘッダを取り付けます。
IGBT制御のキセノンフラッシャー基板に取り付けます。
基板が完成しました!!
テストで、トリガーに電圧を加えて光るかどうか試してみます。
トリガーの信号に合わせて、キセノン管が光りました!
Raspberry Pi Picoでフラッシュ!
制御のためのマイコンにRaspberry Pi Picoを使います。Arduinoでプログラムしました。IGBTのONの時間を10usから40usへと変化させます。
IGBTのONの時間を10usにすると、細い雷がキセノン管の中に走ります。10usより長くしていくと雷が強くなってきます。
かなり昔に作った、小さな雷を観察する装置の光のようです。
ONの時間を長くしていくと、ある時間からは強く放電し明るく発光するようになりました。そして40us以上では明るさは変わりませんでした。
IGBTのON時間とキセノン管の明るさの関係はリニアではないようです。また10us以下では、パチっと音はしますが、光は見えませんでした。
明るさが調節可能なキセノン管フラッシャー完成
IGBTを使って、マイコンから明るさの調節できる、キセノン管フラッシュ回路が完成しました!
発光タイミングと明るさがマイコンから自在に制御できるので、面白いことができると思います。
ただ課題もあります。連続点灯していると、High voltage DCDCが触れない程に高温になってしまいます。もともとニキシー管用に作った180V数mAしか出力できない回路なので、300Vでは効率が悪く損失が大きいようです。もっと電流が出力できる高電圧発生回路が必要なので、後で設計してみたいと思います。
トリガートランスのピンアサインがデータシートと違っていて、原因がわかるまでIGBTやIGBTドライバが何度も焼けました。IGBTは壊れる時に煙が出たり音がしたりせず、静かにショートモードで壊れます。壊れるとドレインとソース間が短絡したり、ゲートとソース間が短絡しIGBTと共にIGBTドライバから煙が出たりして、なかなか楽しい実験ができました。
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