いやゆるワットチェッカーみたいな、今使っている電流、電力を測定する回路を作りたいと思います。
BL0940
BL0940は、交流の電流と電圧を測定し、電力、力率、電流、電圧をシリアルかSPIで出力してくれる便利なICです。
非絶縁の回路例
BL0940のアプリケーションノートに使い方が書いてあります。
電流の測定は、コンセントの途中に電流測定用の抵抗を接続して、その抵抗の両端の電圧をICのIN,IPへ入力します。
電圧の測定は、コンセントの電圧を分圧してVPに入力します。
測定結果は、TXに出力されます。
とってもシンプルです。
この回路で注意しないといけないのは、コンセントのコールド側(黒い線)が、回路のGNDと接続されている点です。この回路をそのまま作ってしまった場合、回路のどの配線を触っても感電してしまいます。
この回路が、誰にも触れられないような、ケースに入いった状態にするのであれば良いのですが、マイコンがUSBでパソコンにつながっていたり、配線を変更するような、実験向きの回路ではありません。
絶縁の回路例
BL0940のアプリケーションノートには、カレントトランスを使ったコンセントと絶縁された回路例も載っています。例えば、2000:1のカレンとトランスを使って電流を測定し、1:1のカレントトランスを使って電圧を測定します。
これであれば、コンセントと回路が絶縁されているので、カレントトランスの2次側以降の配線に触っても感電することはありません。
回路の設計
このICは、電流、電圧共に差動入力になっています。
電流波形の最大振幅は±50mV(35mVrms)。電圧波形の最大振幅は±100mV(70mVrms)となっています。入力される振幅が、これらの最大振幅よりも小さくなるよう、回路を設計します。
電流の測定回路
コンセントの電流は一般に15Aが最大です。瞬間的には倍の電流が流れると想定して、30Aを測定の最大値にしようと思います。
1000:1のカレントトランスを使えば、30Armsの電流を30mArmsに変換できます。
カレントトランスの2次側の抵抗(R5)を1Ωとすれば、抵抗(R5)に発生する電圧は、
E = I × R = 30mArms × 1Ω = 30mVrms
となり、30Armsの電流を30mVrmに変換できます。
ICの最大入力振幅は35mVrmsなので、ちょうどいい電圧です。
その後のフィルタ回路は、アプリケーションノートのパラメータをそのまま使い、保護回路としてダイオードのクランプ回路を加えました。
電圧の測定回路
電圧の測定には1:1のカレントトランスを使います。
アプリケーションノートの回路同様、コンセントに100kΩ(R9からR12までの合成抵抗)とカレントトランスの1次側をつなぎます。
カレントトランスの1次側に流れる電流は、コンセントの電圧が100Vなので
I = E / R = 100Vrms / 100kΩ = 1mArms
となり、2次側にも同じ1mArmsが流れます。
コンセントの瞬間最大電圧を約300Vとし、2次側の抵抗(R7)を、22Ωにしました。
コンセントの電圧が100Vの場合、カレントトランスの2次側には1mArmsの電流が流れるので、抵抗(R7)には
E = I × R = 1mArms × 22Ω = 22mVrms
の電圧が発生します。
コンセントの電圧が300Vrmsの時には66mVrmとなり、ICの最大入力70mVrmsを下回ります。
後段のフィルタ回路はアプリケーションノートと同じにし、ダイオードによるクランプ回路を追加します。また、1次側の入力にも300Vを上回った場合の保護として、240Vのバリスタを入れました。
回路設計完了
以上で、回路設計の完了です。コンセントの電気と、測定回路の電気が絶縁されているので、安全に電力の測定や実験ができます。
KiCadで基板設計
BL0940を使うことで、少ない部品で回路が構成できました。
基板の設計が完了しました。
JLCPCBに基板を発注
特殊な基板でも安価に製造してくれるJLCPCBに基板を発注します。
データの登録
今回の基板の配線には、最大で20A程度の電流が流れることを想定しているので、電気抵抗を下げるため、銅箔の厚みを通常の2倍の2ozに設定しました。JLCPCBは、銅箔の厚みを2倍にしても$17しか上がりません。金メッキも$17でした。特殊な基板をとても安く作ってくれるので助かります。
メタルマスクも一緒に作ってもらいます。メタルマスクはそのままではとても大きいので、基板のサイズ+5cm程度になるよう、150mm x 150mmにカットしてもらいます。
また、基板とメタルマスクの位置合わせが簡単にできるようにデータを作ってあるので、FiducialをEtched Throughにします。
以上で設定が完了です。カートに追加します。
支払い
Secure Checkoutをクリックして支払いに進みます。
1.発送先の設定、2.発送方法の設定をします。
3.のSubmit OrderはデフォルトでPay Directlyになっていますが、私はいつもReview Before Paymentを選んでいます。この後JLCPCBでデータの確認作業が始まり、パラメータの設定ミスなどで場合によっては料金が変化します。「Review Before Payment」は確認が終わって金額が確定してから支払うことができます。
ContinueをクリックするとJLCPCBでデータの確認作業が始まり、ステータスが「Reviewing」になります。
確認が終わるとメールが届きます。今回は30分程度で確認作業が完了しました。Payをクリックして支払いに進みます。
クレジットカードかPayPalで支払いをします。
ステータスがIn Productionになり、製造が開始されました。
基板の発注完了!
BL0940を使った、電力測定回路の基板の発注が完了しました。うまく動作するといいなぁ。
2022.9.26 つづきはこちらです。
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