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家全体の消費電流を測定する装置を作っています

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以前コンセントにつながった機器の消費電流を測定する実験をしましたが、今回は家全体の消費電流を測れるようにしたいと思います。

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回路の変更

前回の実験回路は、カレントトランスの穴に通した電線に流れる電流を測定するものでした。

BL0940電力測定実験キット | kohacraftのshop
接続された機器の消費電力をマイコンで測定できます

今回は家全体の電流を測りたいので、クランプ型のカレントトランスを使って電流を測るよう、回路を変更します。

使うのはこちらの、極小型クランプ式交流電流センサ「CTL-10-CLS」です。写真のように、フェライトが2つに分離して電線を挟み込むことができます。このため、既に設置済みの配線の電流を測定することができます。

このクランプ式のカレントトランスは80Aまで測定できで、変流比は3000:1です。前回使ったカレントトランスは1000:1でした。そのため回路のパラメータを変更します。

電力を測定するICには、BL0940を使っています。このICの電流用の入力回路の最大振幅は±50mV(35mVrms)です。

家のブレーカーの容量が40Aなので、余裕を持って60Aまで測定できるようにしたいと思います。

カレントトランス(CT1)で発生した電流が、カレントトランスの負荷として接続された抵抗(R5)を流れることによって発生する電圧波形を、ICへ入力します。

カレントトランスが発生する電流は、カレントトランスがクランプした電線を流れる電流(I)の1/3000です。そのため、R5に発生する電圧(VR5)は、

VR5 = I / 3000 * R5

Iの最大を60Arms、VR5の最大が35mVrmsなので、

0.035[Vrms] = 60[Arms] / 3000 * R5

R5の式に変形すると、

R5 = 0.035[Vrms] * 3000 / 60[Arms] = 1.75 [Ω]

近い値の抵抗として1.74Ωがあるので、R5は1.74Ωとします。

その他は、前回の回路と変わりません。

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部品の実装

クリームはんだの印刷

抵抗値が前回と異なるので、JLCPCBに作ってもらった基板に、新たに部品を実装します。

ダンボールの上に基板を置きます。

メタルマスクを置いて、画鋲で止めます。これでメタルマスクと基板の位置合わせが完了します。

メタルマスクの奥にクリームはんだを載せます。クリームはんだには、オーブンで簡単にリフローできる、低温で溶ける低融点鉛フリーはんだを使っています。

スキージには、パテベラというしなるステンレスのヘラを使います。

パテベラでクリームはんだを手前に引き寄せながら、印刷していきます。

完璧な位置に綺麗に印刷できました。

部品の実装

クリームはんだの上に部品を置いていきます。私はピンセットではなく、電動バキュームピックアップツール HAKKO 394を使っています。

掃除機のように部品をテープの中から吸着して...

目的の場所に降ろします。

テープから直接吸着するととても楽なことがあります。上の部品はダイオードです。極性のある部品は、テープの中では必ず同じ方向を向いています。上の写真では、手前がアノード、奥側がカソードです。

基板もこの向きと同じように置いておくことで、部品の向きを確かめたり、向きを変えたりといった動作がなくなり、とてもスムーズに実装することができます。

ノズルを交換することで、1005のような小さな部品から、ICまで実装することができます。

リフロー

熱風が庫内を循環するテスコムのコンベクションオーブンでリフローします。このオーブンは加熱の途中でも温度を変更することができます。

オーブンの中に熱電対型の温度計のセンサを入れておいて、リフローの温度プロファイルに沿って温度を調節していきます。

リフローが完了し、DIP部品もはんだ付けしました。もともとの回路にあったカレントトランスと、電気の出力端子は未実装にしてあります。

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プログラムの変更

前回はコンセント1つを測定すれば良かったのですが、今回は2つ使います。というのも、家の屋根には太陽光パネルが設置してあり、電力会社からの電気と太陽光パネルからの電気と2系統あるためです。

BL0940とESP32とはシリアル通信で通信します。そのため、シリアルポートも2系統用意しないといけません。

ESP32は3つのハードウェアシリアルポートの機能が搭載されています。1つ(Serial)はUSBシリアルとの通信に使っているので、残りの2つ(Serial1とSerial2)を使います。使い方は簡単です。

Serial1.begin( 4800, SERIAL_8N1, rx1Pin, tx1Pin);
Serial2.begin( 4800, SERIAL_8N1, rx2Pin, tx2Pin);

と書くだけです。注意する点は、tx1Pinとtx2Pinは出力ができるIOポートしか指定できないというところです。IO34から36は入力専用のため指定できません。

プログラムを改良して2つのBL0940から測定値を取得できるようになりました。Gridが電力会社からの電気、Solarは太陽光パネルからの電気になります。

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CTL-10-CLSで電流を測る

それでは、クランプ式のカレントトランスを接続して電流を測定してみます。負荷として40Wの電球を光らせました。クランプメータは0.37Aです。

BL0940の測定では0.38A。

200Wの電球に変更すると、クランプメータでは1.5A。

BL0940では1.5Aと、クランプ式のカレントトランスでも正しく測定できることがわかりました。

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もう一つの回路もテスト

片方の系統の測定がうまくいったので、もう一方もテストしたいと思います。電気をもう一方へも供給するために配線を作ります。これまでは丸端子に裸圧着端子を使っていたのですが、絶縁カバーがついていた方がより安全かなと思い、絶縁被覆付圧着端子を使おうと思います。

そこで、マーベルの絶縁被覆付圧着端子用の圧着工具を購入しました。

ラチェット式なので、最後まで握り潰さないと工具が開き(解除され)ません。力もそれほど必要なく確実に圧着することができます。

絶縁被覆付圧着端子になり、裸圧着端子よりも金属が剥き出しの部分が減って、より安心感があります。

作ったケーブルを使って、2つのBL0940ボードに電気を供給します。

1.5Aの負荷をつないで、2つのボードから1.5Aと同じ値が測定できました。

どちらのボードも正しく動作しているようです。

次回は、測定値を確認できるように、ESP32をESP32-DevKitCから、液晶表示ができるM5StickCに置き換えたいと思います。

2022.2.2追加 つづきはこちら