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VFD用の電源モジュールを作っています

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VFDはニキシー管ほど高い電圧は必要としませんが、ちょっと特殊な電源が必要です。そこで、手軽にVFDを点灯できるよう、専用の電源モジュールを作っています。

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VFDを点灯させるには

VFDは、加熱されたフィラメントから飛び出した電子が、蛍光体に当たることで発光します。

VFDの動作原理(双葉電子工業のページより)

電子の放出

物質が高温に加熱されると、物質内の電子が外へ飛び出してくる「熱電子放出」という現象が発生します。この現象を利用し、フィラメントに電気を流すことでフィラメントを加熱し、電子を放出させます。この電子は、電球が光っているのと同じようにフィラメントから全方向に放出されます。

放射方向の制御

電子はマイナスのエネルギーを持っています。そこでプラスの電気につないだ金網(グリッド)を近くに置くと、フィラメントから放出された電子は、金網に引き寄せられるようになります。全方向に放出されていた電子が、金網にスプレーを吹き付けるように、金網へ向かって放射されるようになります。

電子は金網の金属に当たってエネルギーを失う場合もありますが、ほとんどは金網の穴を通り抜けます。

蛍光発光

ある特定のエネルギーが加わることで発光する物質を、蛍光体と言います。蛍光ペンのインクは、目に見えない紫外線の光によって、目にみえる光(可視光)が発光する蛍光体を利用しています。黄色の蛍光ペンで描いた絵は、目に見えない紫外線が当たることで黄色い光が発生するため、あたかも黄色に光っているように見えています。

同様に電子が照射されると可視光に変換される蛍光体もあります。この蛍光体を金網(グリッド)の裏に置きます。VFDは、特定の部分(セグメント)だけを光らせたいので、各セグメントの蛍光体の背後に電極(アノード)を用意しておきます。

セグメントの背後の電極をプラスにすると、電子はマイナスのエネルギーを持っているので、電極へ吸い寄せられ蛍光体に衝突し発光します。電極をプラスにすれば発光し、マイナスにすれば発光しません。上の図のように7つセグメントのうち、a,b,c,d,gのセグメントだけをプラスにすることで「3」を表示させることができます。

必要な電圧

VFDを点灯させるには、これまで登場した「フィラメント」「グリッド」「アノード」の3つの電極に電気を供給する必要があります。

例えば、IV-6というVFDの場合、ロシア語のデータシートをGoogleカメラで翻訳してみると、スタティック点灯の場合、

  • フィラメント電圧:1V
  • グリッド電圧:25V
  • アノード電圧:25V

と、フィラメント用の1Vと、グリッド・アノード用の25Vの、2種類の電圧が必要なことがわかります。

フィラメントの交流駆動

VFDは複数個使って数字を表現します。この時、それぞれのVFDのフィラメントを直列に接続するのが一般的です。並列に接続すると、フィラメントへ流す電流がVFDの数だけ大きくなってしまいますが、直列に接続すればVFD1個分と同じです。供給する電圧は高くなってしまいますが、VFD1つあたり1Vなので、4つ直列にしても4Vと回路的に作り出しやすい電圧です。5Vの電源に抵抗を1つ追加するだけでOKです。

しかし直列接続には問題があります。それぞれのVFDの明るさが変わってしまうのです。上の写真のように4つのVFDがあり、一番左に4Vを一番右に0Vを接続したとします。すると、各VFDのフィラメント電圧は、左から右へ向かって1Vずつ下がっていきます。一番左は4Vあるのに、一番右は1Vしかありません。フィラメント電圧はVFDの明るさに影響し、左側のVFDは明るく光るのですが、右へ行くに従い暗くなってしまします。

そこで、フィラメントの電気を交流駆動する方法が使われます。交流にすると、ある時間は左側が明るいのですが、ある時間は右側が明るくなります。左右が交互に明るくなったり暗くなったりし、それが目の残像によって明るさが平均化されることで、全てのVFDが同じ明るさに見えます。

MM5316回路

これは、MM5216NというVFD用に使われていた時計用ICのデータシートにある回路図です。四角いICの下にVFDが4つ並んでいます。VFDの下にある三角形がフィラメントの記号です。VFD4つ直列に接続され、左側のトランスの2次側に接続されています。コンセントの交流の電気を使ってフィラメントを駆動し、明るさに差が生じないようにしています。

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VFD用の電源モジュールを作る

ブロック図

VFDはニキシー管に比べて低い電圧で表示できるものの、ちょっと特殊な駆動方法となっています。そこで、手軽にVFDが使えるように5Vを接続すれば、グリッド用の電気も、フィラメント用の電気も生成できるVFD用の電源モジュールを作りたいと思います。

ブロック図は上の図のようになっています。グリッド・セグメント用の高い電圧は昇圧型のDCDCコンバータで生成します。

フィラメント用の交流電圧は、5Vから降圧した電気を、モータードライバにあるモーターの正転/逆転機能を使って交流に変換することで生成します。

基板の設計

KiCadで基板を設計します。NixieDCDCのようになるべく小さくしました。

端子の部分には、別の基板にこの基板を直接実装できるように、端面スルーホールを追加しました。

できた基板を10cm x 10cmの基板に8個面付けしました。これで8個のモジュールを一気に組み立てられます。

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基板の発注

基板の設定

PCBWayに基板を発注します。「今すぐお見積もり」をクリックします。

面付けされた基板なので、「基板の種類」で「面付け」に変更します。PCBWayは、面付けされた全ての子基板に不良が存在しない基板を製造することができます。「X-out Allowance in Panel」を「いいえ」にします。「面付けされた子基板に不良を許容するか」という設定です。

一般的には、もし製造時に面付けされた子基板に不良が発生してしまった場合、その子基板にマジックでバツ印が書かれて届きます。これまで数回、別の基板製造メーカーで作った時に経験したことがあります。PCBWayでは、そのようなことがない、すべて良品の基板を作ってもらうことができます。

あとはレジストの色を黒に設定し、表面処理を金メッキの「ENIG」にしました。今回の基板には端面スルーホールがあるので、追加オプションの「端面スルーホール」にチェックを入れます。

メタルマスクの設定

基板と一緒にメタルマスクを作ってもらいます。

基板の表面にしか部品がないので、「メタルマスクサイド」を「表面のみ」にします。

基板とメタルマスクとはマップピンを使って位置決めできるようにデータを作っているので、「既存の基準点」を「レーザーが通る」に変更します。これをしないとメタルマスクに穴が開きません。

メタルマスクはそのままではとても大きなサイズなので、基板のサイズに対して2cm大きいサイズにカットしてもらうよう「その他特殊加工」の欄に「Please cut 120mm in width and 120mm in height」と120mm x 120mmにカットのお願いを書いておきます。

以上で設定が完了です。「カートに追加」をクリック。

ガーバーファイルのアップロード

「ガーバーファイルを追加」をクリックして、zipに圧縮したガーバーファイルをアップロードします。アップロードができたら、緑色の「今すぐ注文する」をクリック。

データの確認待ち

PCBWayでデータの確認(レビュー)が行われます。一般的にこのテータのチェックには数時間かかるのですが、PCBWayはとても速く、数分で完了する時もあります。

今回は5分程度で完了メールが届きました。「チェックアウトに進む」がオレンジ色になるので、クリックして支払いに進みます。

支払い

PayPalかクレジットカードで支払いの設定をして、発送業者を選びます。あとは、右側の「注文する」をクリック。

発注完了

ステータスが「製作中」になりました。

PCBWayは製造も早いので、すぐに届くと思います。届いたら組み立てたいと思います。

2023.2.28 続きはこちら

完成したVFD電源モジュールは「kohacraftのshop」で販売しています。

VFD用電源モジュール | kohacraftのshop
VFDを点灯するために必要な、グリッド電圧とフィラメント用交流電圧を5Vから生成できる電源モジュールです