以前作ったものよりも小型化した、ニキシー管用の高電圧発生 DCDCを作っています。
NixieDCDC
NixieDCDCは5Vから175Vを生成して、ニキシー管を光らせられるDCDCコンバータです。
今回はこれまで使っていたDCDCコンバータICを違う物に変更し、消費電流が下がるかどうか実験したいと思います。
KiCadで基板を設計
以前は部品の実装時にピンセットを使っていたので、部品と部品の間にスペースが必要でしたが、今は電動バキュームピック HAKKO394を使っているので、部品を密集させても実装ができます。
そのため、今回の基板サイズは、24mm x 14mmと前回の28mm x 16.5mmよりも一回り小さくなりました。
このモジュールを直接別の基板に実装できるように、端面スルーホールにしました。
10cm x 10cm以内であれば安価に製造してもらえることから、10cm x 10cmの中にできるだけ多く18個面付けしましてみました。
生成したガーバーデータをZipで圧縮します。
JLCPCBに発注
黒レジストがややつや消しブラックで美しく、金メッキ基板でも安価に製造してくれるJLCPCBに基板を発注したいと思います。
基板の設定
「Add gerber file」をクリックしてzipで圧縮したガーバーファイルをアップロードします。
正常に読み込まれると基板のプレビューが表示されます。
今回の基板は面付けされた基板なので、「Delivery Format」を「Panel by customer」に変更します。縦6つ、横3つに面付けしたので、「Column」を6、Rowを「3」にします。
基板の色を黒にしたいので、「PCB Color」を「Black」に変更します。Blackに変更すると、上部に表示されている基板のプレビューもブラックに変わります。これは分かりやすいですね。
金メッキの基板にしたいので、「Surface Finish」を「ENIG」にします。
最後に、この基板には端面スルーホールがあるので、「Castellated Holes」を「Yes」にします。「Edges」には、端面スルーホールする側面が何面あるかを指定します。この値は、面付けされる前の基板での端面スルーホールがある側面の数です。
今回の基板は、面付けする前の基板の左右2つの側面に端面スルーホールがあるので、「Edges」の数字は「2」となります。
以上で基板の設定は終わりです。
メタルマスクの設定
続いてメタルマスクの設定をします。
メタルマスクは標準サイズがとても大きいので、小さくカットしてもらいます。「Customized size」を「Yes」に変更します。
これまでは基板サイズ+5cmのサイズにカットしてもらっていましたが、そこまで大きくなくても問題ないことがわかったので、基板サイズ+2cmの大きさにカットしてもらいます。基板と同じサイズの場合、はんだペーストを印刷している時に、はんだペーストがメタルマスクの外へ漏れやすくなるので、私は+2cmに落ち着きました。
基板は両面基板ですが、部品は表面にしか実装しないので「Stencil Side」を「Top」に変更します。
画鋲を使ってメタルマスクと基板との位置合わせができるようにデータを作ってあるので、「Fiducials」を「Etched Trhough」に変更します。
以上でメタルマスクの設定も終わりです。
画面右上の「SAVE TO CART」でカートに入れます。
支払いの前にデータをチェックしてもらう
「Secure Checkout」をクリックして支払いへ進みます。
発送先、配送業者の選択をして、3番目で「Review Before Payment」を選ぶことをお勧めします。JLCPCBのエンジニアがデータが正しいか確認した結果、先ほどの基板の設定パラメータのミスや、複雑さから料金が上がることもあります。先に支払うと金額が変更になった場合にデータを修正することができませんが、「Review Before Payment」であれば、金額が確定してから支払うことができ、納得できなければ基板を修正してアップロードし直すことができます。
基板のデータチェックには30分程度から数時間かかります。
基板の修正
今回の基板データはJLCPCBのデータチェックを通過できませんでした。
理由が書かれたメールが届きました。
please design half of castelalted holes are inside the board and half of them are outside the board edge.
Stencil order 2701843A_SO12302206077 cancelled due to this PCB order cancelled
端面スルーホールの位置は、基板の内側か端面へ配置してください。これに伴いメタルマスクの製造も中止されました。
端面スルーホールの穴の中心位置は、基板から出てはいけないようです。
端面スルーホールのメッキされる面積を増やしたかったので、少し大きなドリルで、基板の外側にドリル中心がある設計でした。
ドリル中心を基板の端面に移動し、ドリル径を小さくしました。そこれで、先ほどと同じようは端面スルーホールのメッキ幅が確保できます。
基板のサイズが少し変わってしまったので、面付けをやり直します。ついでに面付け数を1行減らして、余裕を持った配置にしました。
「Replace File」をクリックして、修正したガーバーファイルをアップロードします。すると、JLCPCBでのデータチェックが開始されます。
しばらくするとレビューを通過したというメールが届きました。オレンジ色の「Pay」をクリックして支払いへ進みます。
PayPalかクレジットカードで支払いを行い発注完了です。
あとは届くのを待つだけと思いきや...
JLCPCBから確認のメールが届く
Sorry to bother you, but there is one thing that we want to confirm with you about your stencil order before proceeding.
The pad size in paste layer are smaller than that in copper layer, shall we cut them as per paste layer or copper layer?
メタルマスクの製造前に確認したいことがございます。
パッドサイズに対してメタルマスクの開口が小さいですが、こちらでパッドサイズと同じサイズに修正しましょうか?
これには驚きました。パッドとメタルマスクのサイズもチェックもしてくれているんですね。そうなんです。矢印の先の部品だけ、メタルマスクの開口(緑)をパッド(黄色)よりも小さくしていたんです。
メタルマスクの開口を小さくすることで、印刷されるはんだペーストの量が減ります。それにより、リフロー時のはんだリッジの発生を軽減させることができます。メタルマスク自体の厚みを薄い物に変更するという手段もあるようですが、開口を小さくした方が効果的にハンダペーストの量を減らせます。
私は0.65mmピッチよりも狭い部品は、開口が0.05mm狭くなるように設定し、はんだブリッジを軽減させています。SOT-23はピッチがそれほど狭くはありませんが、とりあえず開口を小さく設定していました。
設定の方法は以下のように操作します。
開口を変更したいフットプリントをダブルクリックしてプロパティを開きます。その中の「クリアランスのオーバーライドと設定」のタブを開きます。
「ハンダペーストの絶対クリアランス」を「0」から「-0.05」に変更します。
これで、その部品のメタルマスクの開口がパッドサイズに対して0.05mmずつ小さくなります。
JLCPCBのエンジニアは、部品1つだけパッドに対してメタルマスクの開口が異なっていることに気づいて確認のメールを送ってくれました。発注者の意図しない基板にならないよう、しっかりとチェックしてくれいるんですね。素晴らしいサービスを提供してくれていると、とても感心してしまいました。
メールで、理由とそのまま製造してくださいと返事をして製造を継続してもらいました。
届いたら組み立てたいと思います。
2023.3.27 つづきはこちら
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