DCDCコントローラICと外付けMOS-FETを使うことで、変換効率が高い高電圧DCDCコンバータができました。
回路の設計と基板の発注は前回の記事をご覧ください。
JLCPCBから基板が届く
これまではDCDCコンバータICを使って作ってきましたが、今回はDCDCコントローラICを使って回路を設計してみました。
JLCPCBに注文して10日ほどで、青い箱に入った基板が届きました。
このDCDCコンバータモジュールは、別の基板に直接実装することができるよう、基板の側面にもメッキがある端面スルーホールになっています。金メッキの色といい、とっても綺麗にできています。
2つだけ試作
今回の回路にはちょっと値段の高い部品を使っているため、試しに2つのモジュールだけ部品を実装しようと思います。
クリームはんだの印刷
クリームはんだは奥から手前へ引き寄せながら印刷します。印刷の途中にスリットがあると、段差ができて印刷がうまくできない場合があります。
普段であれば上の写真のようにスリットが縦になる向きに基板を置くところなのですが、今回は2つだけしか印刷しません。
途中にスリットが存在してしまいますが、90度回転させてた向きに基板を配置してクリームはんだを印刷することにします。
メタルマスクを基板の上に載せます。基板とメタルマスクの位置合わせにはマップピンを使います。
あらかじめ開けておいた穴にマップピンをさします。マップピンを使って位置合わせすることで、基板のパッド位置とマスクの位置がピッタリ合わせて固定することができます。
データの作り方はこちらをご覧ください。
右側の1列だけクリームはんだを印刷したいので、隣の基板にクリームはんだが印刷されないようにマスキングテープを貼っておきます。
クリームはんだを印刷する幅が狭いので、今回は幅が50mmのステンレスパテベラで印刷することにします。
このヘラは普通のヘラと違い、金属の部分が適度にしなります。このしなりによって均一な圧力でクリームハンダを印刷することできます。
0.65mmピッチのSSOPパッケージのパッドにも、位置ズレなく綺麗にクリームはんだが印刷できました。
印刷が終わったら器具の清掃です。クリームはんだは無水エタノールを使うと綺麗に落とせます。
無水エタノールは100円ショップで売っていたディスペンサーに移し替えて使っています。
キブワイプを上から押し込むと、適量のエタノールがキムワイプに染み込みます。とても便利です。
無水エタノールが染み込んだキムワイプで、ヘラやメタルマスクについたハンダクリームを綺麗に拭き取ります。
部品の実装
部品の実装には、電動バキュームピック HAKKO394を使います。
電動バキュームピックは小さな掃除機のような工具で、スイッチを押すとポンプが動作しノズルの先端で部品を吸着します。部品は、チップ部品の入ったテープから直接吸着します。
目的の場所に部品を置いて、スイッチを離すと実装できます。
部品の上から吸着するので、実装場所の両サイドに部品があっても実装が可能です。上の写真のように、抵抗(R1)とコンデンサ(C3)の間のR2に抵抗を実装してみます。
部品と部品の間に、部品を実装することができました。
今回は、これまでよりもノズルの直径が太いノズルも使ってみます。
これまでの青いノズルよりも太いため、空気がたくさん吸い込まれて吸引力が高くなりました。
0603(1608M)の部品よりも大きな部品を、これまでよりも安定して吸着し実装することができました。いいですね。
電動バキュームピック HAKKO394を使うと、ピンセットで実装するよりも短時間で部品を実装することができます。一度使うと、便利すぎてピンセットには戻れません。ちょっと高いですが、たくさん実装するのであれば、おすすめの工具です。
ノズルには、純正よりもノズルが短く位置合わせがしやすいこれを使っています。
今回は2つ試作するうちの、1つは全て部品を実装し、もう一つはトランスを実装しないことにしました。動作させてみて問題があった時に、析用用に使おうと思います。
リフロー
熱風で庫内の温度を均一に加熱できる、テスコムのコンベクションオーブンでリフローします。
このオーブンは加熱の途中でも温度変更ができます。庫内に熱電対温度計を入れておいて、低融点鉛フリークリームはんだの温度プロファイルに合うよう、庫内の温度が90度→130度→165度に温度を変化させてリフローします。
綺麗にリフローできました。
試作のモジュールが2つできました。
特性を測定
どの程度の負荷まで電力を供給できるのか、以前作ったダミーロードを使って実験してみます。
モジュールへの供給電圧と電流、出力電圧を測定します。電流計を通ると電流計内部の抵抗によって供給電圧が下がるので、入力電流を測定する電流計の後に入力電圧を測定する電圧計を接続しています。
ダミーロードに、先ほど実装したDCDCモジュールを取り付けます。
スモークテスト
電源から電気を供給してみます。電源を供給した瞬間に煙が出て壊れないかどうか、緊張の瞬間です。
煙が出ることなく、左のテスターの電圧が142Vになりました。5Vから142Vが生成されています。
ボリウムを回転させると、設計通り90Vから300Vの範囲で電圧が変更できました。正常に動作していそうです。
175Vでの負荷テスト
出力電圧を175Vに設定しました。
ダミーロードのスイッチを1つONすると負荷抵抗が347kΩずつ追加されていきます。スイッチを1つずつONしながら、入力電流と電圧、出力電圧を記録していきます。
記録データから、出力電流と変換効率を算出しグラフにしました。左が出力電流と入力電流の関係。右が出力電流と変換効率の関係のグラフです。
効率が85%程度と、これまでの作ってきたニキシー管用のDCDCコンバータとは比べ物にならないくらい良い効率になりました。
出力電流が15mAを超えたあたりで出力電圧が低下し始めたので、出力電圧が175Vの設定では15mA程度まで電力を供給できそうです。
100Vでの負荷テスト
ボリウムを調節して100Vに設定し、先ほどと同じ測定を行います。
40個のスイッチを全てONしても、DCDCコンバータの出力に余裕があったので、途中で抵抗を追加して測定しました。そのため、グラフの途中に継ぎ目ができてしまっています。
100Vの場合、効率が87%程度と175Vの時よりも改善しています。出力電流も20mA以上供給できることがわかりました。
300Vでの負荷テスト
この回路の最大電圧に近い300Vに設定して、特性を調べてみます。
175Vの時よりも効率が低下し77%程度です。出力電流は7mA程度供給できそうです。
高電圧DCDCコンバータができました
DCDCコントローラICと外付けのMOS-FETを使うことで、175Vで15mAも供給することができる、これまで作ってきた中で最も効率の高い高電圧DCDCモジュールができました。
次回は、少量実装しようと思います。
2023.4.26 つづきはこちら
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