発光している光の波長がいくつなのか知りたくて、波長がわかる分光計を作ってみました。
回折格子分光計
以前、回折格子(分光シート)とAmazonの空き箱を使って、分光計を作りました。
この時の分光計は、光が虹のように色ごとに分解されるのですが、波長は分かりませんでした。
スリットと虹の出る位置は、計算によって求めることができます。
- 回折格子の1mmあたりの溝の本数をn
- 箱の長さをℓ 単位はmm
- 光の波長をλ 単位はnm
- 虹の光が出る位置x 単位はmm(スリットからxずれた位置)
とすると、虹の光が出る位置xは
x = n × ℓ × λ / 1000000
で計算できます。
ということは、箱にあらかじめ目盛りを書いておけば光の波長がわかるはずです。
箱の設計
スリットや目盛りの位置が正確でないといけないので、レーザーカッターを使ってMDFを加工して作ろうと思います。
MakeCaseのサイトで箱の基本データを作ってもらいます。
イラストレータでスリットとのぞき窓、そして計算した位置に目盛りを追加します。
メモリは400nmから650nmまで、50nm単位で目盛りの位置を計算しました。
レーザーカッターで加工
EtcherLaserProで2.5mmのMDFをカットします。
パーツが切り出されました。
組み立て
ブロックのように各パネルをはめ込めば、箱の完成です。簡単です。
のぞき窓から箱の中をのぞくとスリットと目盛りが見えます。目盛りの位置がかなり右側にあって、見にくい感じです。
こちらが今回使う回折格子です。前回は1mmあたり500本でしたが、今回は分解能を上げるために1mmあたり1000本の物を購入しました。
のぞき窓に回折格子のシートを貼り付けます。
虹が出る位置が右すぎて正しく見えません。
窓の位置を変更
先ほどは、スリットとのぞき窓が直線上に並んだ場合の、目盛りの位置を計算しました。
今度はのぞき窓からのぞいた時に正面に虹が見えるよう、スリットとのぞき窓の位置をずらした場合の目盛りの位置を計算します。
回折格子を使った場合の、光の波長と屈折の関係式は、
- 回折格子の格子の間隔をd
- 入射角をα
- 反射角をβ
- 波長をλ
とすると、
d( sin(α) + sin(β) ) = λ…(2-0)
となります。
最初の実験では、
- d = 1/n
- α = 90度
の条件で式を変形し x = n × ℓ × λ / 1000000 という式が導かれています。
さて、
- 回折格子の1mmあたりの溝の本数をn
- 箱の長さをℓ 単位はmm
- 光の波長をλ 単位はnm
とすると、式2-0から
sin(α) + sin(β) = n × λ / 1000000 …(2-1)
と変換できます。
式(2-1)から角度βを求める式に変換すると式(2-2)になります。
角度βが求まったら、各波長の目盛りの位置の式に変換して
の式が得られます。
三角関数やルートが含まれている式で、計算が難しそうでしょ。でも大丈夫。計算はnumbersかexcelに任せればいいのです。
こちらにそのファイルを用意しました。
ファイルを開いて、上の3つのパラメータを作りたい分光計のパラメータに変更すると、目盛りの位置のxβが自動的に計算されます。
のぞき窓が右へずれた分光計が完成しました。
スリットを高演色LED照明に向けて、のぞき窓からのぞきます。正面に虹が見えるようになり、波長がとても読みやすくなりました。
青の光がだいたい460nm。緑の光がだいたい530nm、赤の色がだいたい630nmなので、合っていそうですね。
性能テスト
発光波長がわかっている光源を使って、目盛りが正しいのか確認してみます。光源には波長の広がりがとても狭いレーザー光を使います。650nmの赤、532nmの緑、405nmの青の3本のレーザーポインタを用意しました。
このようにスリットにレーザーを照射します。のぞき窓を直接のぞくと、レーザーの光を見てしまい失明や視力の低下につながるため、絶対見てはいけません。デジタルカメラやスマートフォンで撮影します。
650nmの赤色のレーザー光は、650nmの目盛りの場所に光が届きました。
532nmの緑色のレーザー光は、530nmの目盛りの場所に光が届きました。
405nmの青色のレーザー光は、405nmの目盛りの場所に光が届きました。
全ての波長で目盛りの位置が正しいことがわかりました。計算通りです。物理って結果が理論通りになってすごいですね。
いろいろ見てよう
空
太陽の近くの空の光を調べてみます。
スリットを空へ向けて、のぞき窓からのぞきます。
400nmから650nmにわたって、全ての波長の光が含まれていることがわかります。
ピンクのLED
ちょっと珍しいピンクのLEDです。どんな波長の成分があるでしょうか。
450nmの青と、600nmから660nmの赤の光の成分がありました。青の光を蛍光体を使って赤に変換しているのでしょう。青と赤でピンクに見えるということですね。
RGBで白く光っているLED
RGBの3つの色が入っているLEDを全て点灯させて、白色にしました。この光はどのように見えるでしょうか。
465nm程度の青、520nm程度の緑、630nm程度の赤の3つの光で構成されていることがはっきりとわかります。
ニキシー管
オレンジ色に光るニキシー管はどうでしょうか。
590nmが強く、620nm、650nmと強い波長の光が見えます。
ニキシー管はネオンガスが封印されていて、ネオンランプと同じ光を発します。工業用の分光計で測定した、ネオンランプのスペクトルがテクノシナジー社のページにありました。
585nmに最も強い線スペクトルがあり、650nm、615nmに強い線スペクトルがあります。自作の分光計とほぼ同じですね。
550nmにもちょっと光がありますね。分光計でも550nmに暗いですが光があります。
波長がわかる分光計ができました
回折格子のシートとレーザーカッターを使って、波長がわかる分光計ができました。これで、どの波長で光っているか測定することができるようになりました。
もっと、いろいろな物の波長を測定してみたいと思います。
ここでご紹介した分光器のキットはkohacraftのshopにて販売しております。
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