回折格子のシートを使った、波長のわかる分光器の作り方をご紹介します。設計の方法は前回の記事をご覧ください。
箱の組み立て1
素材は2.5mmのMDFです。レーザーカッターで切り出しているので、スリットや目盛りの位置が正確です。そのため、波長が±10nm程度で読み取ることができます。
パネルの表裏について
パネルには表と裏があります。パネルのエッジの部分に焦げた跡がある面が、表面となります。
箱の天板には指の絵が描かれており、底板には何も描かれていません。
まずは、底板を裏返してください。
サイドパネルの取り付け
先ほど裏返した底板の他に、
- 細長いサイドパネル 2枚
- 目盛りの描かれたパネル
- 丸い穴が開いたパネル
を用意します。
底板の周りにサイドパネルを配置します。
- 底板の上側に、目盛りの描かれたパネルを置きます。おにぎり(三角)の穴が左下になるように置きます
- 底板の両側には、細長いサイドパネルを裏返して置きます
- 底板の下側には、丸い穴を右側にして「kohacraft.com」の文字が右下になるように置きます
三角の穴が開いたパネルと、左側のパネルを底板に取り付けます。
- おにぎりの穴が左下になるように、パネルの凹凸が底板の凹凸にはめこみます
- 左のサイドパネルを、同様にはめ込みます。
- 右側のサイドパネルをはめ込みます
- 丸い穴が右側に、「kohacraft.com」の文字が右下になるようにはめ込みます
回折格子シートを貼り付ける
一緒に入っている、回折格子のシートを用意します。
回折格子のシートを、箱の内側に貼り付けます。
回折格子にはあらかじめ両面テープが貼ってあり、両面テープが上側と下になる向きにします。
両面テープのはくりシートをはがします。
箱の角のラインに、回折格子の端面のラインを合わせるように貼り付けます。
- まずは、箱の角のラインとシートの下のラインを合わせながら貼り付けます
- シートにたるみができないように、シートの上部を箱に貼り付けます
箱の組み立て2
箱に天板を取り付けます。
スリットが右下に向くよう箱を回転させます。天板は、指が印刷されている位置が右下になるようにします。
スリットの上に指のマークがあることを確認します。
箱を両手で挟んで、全てのパネル同士がしっかりとはまり込むように、押し込みます。
完成!!
分光器が完成しました。
基本的な使い方
丸い穴からのぞき込んで、スペクトルを観測します。
観測したい光へ、天板に書かれた指の方向を向けます。
まずは太陽付近の空のスペクトルを見てみましょう。
丸い穴の中心をのぞき込みます。
箱に顔をピッタリとくっつけます。
のぞくと、箱の中にはこのような世界が広がっています。
左側のスリットを通った光が、回折格子に当たり屈折して、右側に虹を作ります。
400から650nmまで10nm刻みに目盛りがあります。その目盛りの下に虹の光があれば、光源にその波長が含まれていることになります。
今は、太陽の近くの光を観測しているので、虹のように連続した色の光が見えるため、光に全ての波長が含まれていることがわかります。
一番下の段に「kohacraft.com」の文字にかぶるように虹が見えます。これは箱の左下にあるおにぎり(三角の穴)による虹なので、上の波長の目盛りとは関係ありません。
光の波長を観測する場合には、観測したい光をスリットの中に入れる必要があります。
しかし、スリットはとても細いため、観測したい光をスリットの中に入れることが難しい場合があります。また、観測したい光が少し遠いところにある場合には、スリットの少し左に観測したい光を移動しないといけません。
遠いところの光の測定
それでは、少し離れたところにある光のスペクトルを観測する方法をご紹介します。
今回は、奥に見える交通信号機のスペクトルを観測してみたいと思います。
ここでおにぎり(三角形の穴)を使います。この穴の中に観測したい光を入れます。スリットよりも穴が大きいので、ターゲットの光を見つけやすくなっています。
ターゲットの光をおにぎり(三角形の穴)のてっぺんへとゆっくり移動させます。
おにぎり(三角形の穴)から見えなくなるくらいで、目盛りの下にスペクトルが見え始めます。
さらに上に移動させると、スペクトルがはっきりと表示されます。見えない場合には、若干左右に振ると良いでしょう。
この交通信号の青色は495-500nmということがわかります。
スマホで撮影する方法
スマホとの接続
スペクトルをスマホで撮影して、後からゆっくりと確認したいこともあります。そこで、この分光器にスマホを取り付ける方法をご紹介します。
丸い穴の中心に、スマホのレンズの中心を合わせます。
のぞき窓に隙間があると、そこから環境光が入り、回折格子のシートに虹が発生してしまいます。
そこで、のぞき窓から光が入らないように、黒いテープを貼って光を遮ります。
アセテートテープは、ビニルテープよりも強力で分光器の素材のMDFにもしっかりとくっつくのでオススメです。撮影用のiPhoneもしっかり固定できます。
撮影方法
分光器の天板には、のぞき窓からスリットへ向かって、直線と指が描かれています。
この直線が、観測したい光へ向くように、分光器の向きを合わせます。例として蛍光灯のスペクトルを観測してみます。
分光器を上下左右へゆっくりと動かしていくと、スペクトルが明るく見えるポイントがあります。そこでシャッターを切ります。
太陽付近の空のスペクトルと違って、複数のピークの波長の光しか光っていないことがわかります。
スペクトルの光が強すぎる場合には、ピークとピークの間がつながってしまうこともあります。そこで、カメラの露光時間を短くしてピークを見つけやすくします。
スペクトルの部分を長めにタップし続けます。すると、オートフォーカスと、自動露光がロックされます。
太陽マークを下に下げると、露光時間が短くなって、画像が暗くなっていきます。
このようにすることで、ピークがとても見つけやすい写真が撮影できます。
この蛍光灯の場合、
- 430nm
- 485nm
- 540nm
- 580nm
- 610nm
の5つの波長の蛍光体を使って、綺麗な白色光を表現していることがわかります。太陽の近くの空のように連続したスペクトルではありませんが、これでも人間には白く見えるんですね。
さて次回は
スペクトルもわかって、写真として記録できる分光器が完成しました。これを持って街へ出て、いろんな光のスペクトルを測定してみたいと思います。
2023.6.25 追加 続きはこちら
追加終わり
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