家のブレーカは40Aです。電気自動車の充電と同時にドライヤーやレンジなどを使うとブレーカーが落ちてしまいます。そこで、家の電力が逼迫したら、電気自動車の充電を自動で停止する装置を作りました。
ブレーカーを流れる電流の測定
以前、ブレーカーを流れる電流を測定する回路を作りました。
この装置にあるM5StickCは、現在のブレーカーを流れる電流値をUDPマルチキャストで送信しています。
このため、マルチキャストのポート番号を知っていれば、家のどこにいても現在のブレーカーを流れる電流値を知ることができます。右のM5StickCが現在の電流を測定送信し、左の受信機が受信した結果を表示しているクローンです。当然同じ値を表示しています。
充電管理装置の作成
仕組みはこのようになっています。送信機はブレーカーを流れる電流を測定しUDPマルチキャストで送信します。
受信機はマルチキャストのポートを監視し現在のブレーカー電流値を受信します。電流値が電気自動車に充電しても大丈夫な状態であれば充電器をONします。充電中にブレーカーを流れる電流が許容電流を超えたり、UDPが受信できなかったら、充電器をOFFします。
送信機
送信機はブレーカーを流れる電流を測定し、現在の消費電流値をUDPマルチキャストで送信します。マルチキャストを使うことで、受信機はポート番号を監視しているだけで現在の電流値を得ることができます。
送信は400msに1回の頻度で送信します。
受信機
充電器をONする条件
受信機は、ブレーカーを流れる電流が、ある電流値以下の状態を1分維持できた場合に、充電器をONします。
電気自動車の充電器は100Vのコンセントに接続しているので、消費電流は15Aです。さらに余裕を5A追加して、ブレーカーの許容電流(40A)から20A少ない状態を1分間維持できたらONします。
充電器をOFFする条件
ブレーカーの電流が許容電流の40Aを超えた場合には、ブレーカーが落ちないように充電器をOFFします。ブレーカーは許容電流を超えても遮断するまでに時間的な余裕があるため、許容電流を超えたらOFFするという動作で間に合います。
またUDPで通信しているために、データの欠落が発生します。2秒間(5回)データを受信しなかったら、安全のため充電器をOFFします。
回路の作成
BL940の電力測定装置のカレントトランスを、クランプ型のカレントトランスに変更します。
マイコンには送信機と同じくM5StickCを使います。電気自動車の充電器をON,OFFには12Vのリレーを使っています。そのため、5Vから12VのDCDCコンバータを用意し、M5StickCからDCDCコンバータのイネーブルピンを制御することで、リレーが動作する仕組みとしました。
普通の昇圧タイプのDCDCは、DCDCコンバータをOFFしていても昇圧前の電圧(5V)が出力ピンへと出力されてしまいます。このためイネーブルの時には電気が出力されない、昇降圧型のDCDCコンバータを使っています。
配電盤の作成
充電器の管理装置を配電箱に入れるための工作をします。
ベースの板の切り出し
レーザーカッターEtcherLaserProでMFDからベースボードを切り出します。
この板に、いろいろ取り付けていきます。KiCadのデータも使っているので、穴の位置もピッタリ合います。
動作テスト
ベースボードに、回路を取り付けます。
電源を入れいると、上段に現在のブレーカーに設置された送信機からの情報が表示されます。-1.5Aなので、今は屋根にある太陽電池から系統へ売電中であることがわかります。
電力に余裕があるため、1分間のカウントダウンが始まります。
カウントダウンが終了するとDCDCコンバータがONします。負荷をつないでいないので、消費電流は0Aです。
試しにヒートガンを負荷としてつないでみます。消費電流が12.3Aとなり、ブレーカーを流れる電流も10.5Aに増加しました。
正常に動作していそうです。
配電箱へ取り付け
配電箱には、漏電遮断機と12Vリレーがすでに取り付けられています。空いたスペースに今回作ったベースボードを取り付けて、配線するれば完成です。
電気自動車の充電器を充電ポートに差し込んでおきます。
それでは、漏電ブレーカをONして電気を供給してみましょう。
ブレーカーの流れる電流が1AとONするための条件である20A以下なので、1分間のカウントダウンが始まります。
カウントダウンが終了すると、リレーがONして電気自動車の充電器が動作を開始します。14.7Aと電気自動車に電気が供給されていることがわかります。
車のメーターでも充電を確認できました。
ブレーカーが落ちないEV充電器が完成!
ブレーカーの容量が少ないために、電気自動車を充電していると夜間にブレーカが落ち、家族から冷たい眼差しを受けていたのですが、これで問題解決です。
運用し始めて半年以上経ちますが、運用初日にプログラムのバグでブレーカーが1回落ちた以降は、1度もブレーカーが落ちたことがありません。ブレーカーの容量は40Aと小さいですが、いつでも気兼ねなく電気自動車の充電ができます。
ブレーカーの容量を上げると、電気料金の基本料金が上がってしまうので、とても便利な装置が完成しました。
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