停止線から信号機までの距離が近いために、運転席から見にくい信号機があります。そこで、代わりに見てくれる装置を作ろうと思います。
回路
アイデア
LED信号機は、コンセントの電気を全波整流してLEDを点灯させているようです。全波整流すると周波数が2倍になるので、東日本の場合は100Hz、西日本の場合は120Hzで点滅しています。人の目では点滅はわかりませんが、センサであれば点滅を検出できます。
そこで、光センサの出力を100Hz程度のバンドパスフィルター(BPF)を通して、マイコンで検出できる程度に信号を増幅し、LEDでお知らせしてくれるという回路を作りたいと思います。
BPF
BPFは特定の周波数だけを通すフィルタ回路です。オペアンプを使ったBPFにはいくつかの種類があります。
東大の三尾研究室のサイトにフィルタが設計できるページあるので、これを利用してフィルタを設計してみようと思います。
このサイトによるとBPFは
- 多重帰還形BPF
- 二段増幅型BPF
- バイカッド型BPF
の3種類ありそれぞれ特徴があります。このうち、フィルタする周波数とゲイン、Q(クオリティファクター)を個別に設定することができる「バイカッド型BPF」がテストするには便利そうです。そこで、バイカッド型BPFで設計したいと思います。
バイカッド型BPF
まずはざっくりと、コンデンサの値は22nFにして計算してみます。
- ゲイン:1000
- Q:1
- f0:110Hz
ゲインはとりあえず1000にしてみます。Qは鋭くなく1に、周波数は東日本と西日本どちらでも使えるように平均値の110Hzとしてみます。
すると
- R1,R2,R3:65.8kΩ
- R4:65.8Ω
となりました。
65.8kΩは近い値として68kΩが、65.8Ωは68Ωがあります。なかなか現実的な値になりました。実際にある抵抗値でフィルタの特性がどう変化するのか確認してみます。
- R1,R2,R3:68kΩ
- R4:68Ω
にしてフィルタ特性を計算してみます。ゲインとQは変わらず、f0だけ106Hzと少しだけ低くなりました。でも十分でしょう。
R4はゲインに関係します。例えばさらに10倍した1万倍がよければ抵抗値を1/10にして6.8Ωにすればよく、100倍で十分であれば抵抗値を10倍した680Ωにします。このR4を変えても、他のフィルタ特性が変わらないって便利な回路ですね。
ゲインを上げるとR4が小さくなります。ということは、回路図を見ると入力インピーダンスが小さくなることを意味します。
明るさセンサのインピーダンスは1kΩ程度で使うため、低い入力インピーダンスではかなり波形が小さくなってしまいます。
そこで、光センサとバイカッド型BPFの間にバッファを入れようと思います。せっかくなので、バッファもBPFにして100Hzのみを効率よく検出できるようにしたいと思います。
多重帰還形BPF
バッファの代わりになるBPFとして多重帰還型BPFを利用します。ここでもコンデンサの値を先ほどと同じ22nFにして
- ゲイン:1
- Q:1
- f0:110Hz
で計算してみます。
- R1,R2:65.8kΩ
- R5:132kΩ
となりました。
せっかくアンプを使っているので、何倍か増幅させたいです。抵抗値を適当に変更していたらいい感じのパラメータになりました。
- R1:22kΩ
- R2,R5:220kΩ
の場合
- ゲイン:5
- Q:1.7
- f0:109Hz
ゲイン5倍で、周波数も110Hzにとても近いです。
ブロック図と回路図
というわけで、ブロック図は上記の図のように決まりました。
回路図にすると上記のようになります。オペアンプには単電源で動作する代表的なLM385を使ってみます。
LM385は電源電圧から1.5V程度の範囲は出力できません。電源電圧が5Vの場合、出力電圧範囲は0Vから3.5Vとなります。このため、バイアス電圧を電源電圧の半分の2.5Vではなく3.5Vの半分の1.8V程度としました。
試作
動作するか試しに回路を作ってみました。
こちらが光源です。信号機と同じように、全波整流ダイオードで全波整流した電気でLEDを点灯させます。電圧降下させるためにフィルムコンデンサを使っています。
コンセントにLEDを接続すると、光センサに光源を向けていないですが、かすかに波形が出ています。
光センサにLEDを向けると綺麗は100Hzの波形が出力されました。
使用している光センサはレンズがついているので、正面の感度が高いように作られているのですが、横から光を当ててもこれだけ波形が現れます。かなり感度がいいのではないでしょうか。
フィルタ回路の実験は大成功です。
次回は基板を作ってJLCPCBに基板を注文したいと思います。
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