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上限230℃のテスコム コンベクションオーブンを250℃まで加熱できるよう改造しました

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鉛フリークリームはんだをリフローできるよう、250℃まで加熱できるように改造してみました。

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テスコム コンベクションオーブン

リフローにはテスコムのコンベクションオーブンを利用しています。

コンベクションオーブンは熱風が庫内を循環することで、均一に加熱できるという特徴があります。

中でもテスコムのオーブンは、加熱の途中でも設定温度を変更することができます。このため、はんだペーストの加熱時の温度プロファイルに合わせて、庫内の温度を調節することができます。

例えば、上のグラフは低融点鉛フリーはんだの温度プロファイルです。90℃でプリヒートした後に140℃程度まで徐々に上げ、165℃まで上げてリフロー完了です。テスコムのオーブンでは、100℃→140℃→180℃(165℃になったら終了)という感じに温度設定つまみを変えていきます。

このようなことができるため、コンベクションオーブンの中でもテスコムのモデルは、基板のリフローに最適なモデルかなと思っています。

しかしながらこのオーブンの最大温度は230度です。低融点鉛フリーはんだ(ピーク165℃)や、有鉛はんだ(ピーク235℃)であればリフローできますが、普通の鉛フリーはんだ(ピーク249℃)の場合は、設定温度の上限が230度であるためにリフローができませんでした。

そこで、テスコムのコンベクションオーブンを250度まで加熱できるよう改造しようと思います。

ただし230度が最大のオーブンを250度に改造すると、すぐに壊れるかもしれませんし、何が起こるかわかりません。もしこの記事を読んで改造される方は自己責任でお願いしますね。

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分解

まずは仕組みを知るために、分解してみようと思います。

カバーを外す

底面にあるカバーにかかった部分のネジを外します。

黒いプラスチックでできた足の、灰色の丸の中にもネジがあります。

8本外します。

背面のカバーにかかったネジを全て外します。

カバーが外れます。

当初のアイデアの一つとして、ヒーターに直接電気を供給すれば良いかなと思ったのですが、配線がちょっと複雑そうですね。間違えて接続するとショートするか壊してしまいそうです。

ヒーターに直接電気を供給するというアイデアは、ボツとします。

操作パネルを外す

制御基板を確認するために、操作パネルを外してみようと思います。

底面の3つのネジを外します。

扉の裏側にあるネジを外します。

操作パネルの裏側に制御基板が取り付けられていました・

リレーが3つ搭載されています。

2つ目のアイデアとして、リレーの制御を乗っ取ってヒーターを常にONしようかなと思っていました。しかし、ヒーターが4本とファン1個に対してリレーが3つあるので、どのように接続されているか解析が難しそうです。このため、2つ目のアイデアもボツとします。

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温度センサをハックする

3つ目のアイデアは温度センサを乗っ取って、高温なのに低温だとマイコンに思わせる方法です。制御基板の右端に「NTC」というコネクタがあります。NTCとは温度が上がると抵抗値が低下する温度センサのことです。

温度センサを抜いてみる

NTCは低温の場合「高抵抗(抵抗値が高い状態)」になります。このためセンサをコネクタから抜いてしまえば、温度センサが超高抵抗の状態になるために、マイコンは低温だと思ってヒーターが常時ONになるのではなくかと考えました。

しかしながら、センサをコネクタから抜くと、マイコンが異常を検知し停止してしまいました。よくできていますね。素晴らしいです。

また、センサを抜くとコネクタには5Vの電圧がかかっていました。この回路は5Vで動作していることがわかります。

温度とセンサ電圧の関係を調べる

それでは、このセンサはオーブンが何℃の時に何ボルトになっているのでしょうが。測定してみます。

センサの電圧は温度が上昇すると共に減少しました。

ということは、このセンサの回路は上の図の左のようになっています。これはNTCサーミスタの使い方としてはごく普通の回路です。ある値の抵抗とNTCサーミスタが直列になっていて、その間の電圧をモニターしています。温度が上がり抵抗値が低下すると、電圧値も低下します。

例えば、250℃の高温の時でも制御マイコンに200℃だと思わせるためには、上の図の右のように、NTCサーミスタが50℃の時の抵抗値だけ抵抗を追加すれば良いことになります。

実際にセンサの抵抗値を測定してみると、庫内が50度の時のNTCサーミスタの抵抗値は54kΩでした。このため54kΩの抵抗を追加すれば、庫内が250℃でもマイコンは200℃と勘違いすることになります。

しかし、ここで問題があります。54kΩが常に追加された状態の場合、加熱される温度は常に設定温度から50度ずれてしまいます。普通に使う時には不便です。

そこで、上の図の回路のようにしました。普通の押しボタンとは反対の動作をするスイッチを使います。スイッチを押していない時にはスイッチがONの状態で、スイッチを押すとOFFになります。通常はONなので抵抗はバイパスされて、NTCサーミスタの正常な温度で加熱されます。スイッチを押すと抵抗が追加され、制御マイコンは抵抗値の分だけ温度が低いと錯覚します。

抵抗値は22kΩとしました。というのも通常は230℃まで加熱できます。250℃まで加熱できれば良いので、さらに20℃だけ加熱できれは十分です。そこで、50℃の時のNTCサーミスタの抵抗値54kΩの約半分で22kΩとしました。

改造

プッシュするとOFFになる、ノーマリークローズのスイッチを用意しました。配線には耐熱電線を使っています。

制御基板の上の写真の矢印の部分に抵抗追加します。パタンカットして、レジストを除去します。

パタンカットしたところに22kΩを追加して、両サイドにスイッチのケーブルをはんだ付けします。

温度ブーストスイッチが取り付けられました。

動作テスト

それでは、250℃まで加熱できるか実験してみます。

まずは通常の動作で、最大温度まで加熱してみます。240℃まで加熱しこれ以上温度は上がりませんでした。(冷えた状態から加熱すると設定温度よりも高くなることがあります。普段は230℃ちょっとまでしか上がりません)

ここで温度ブーストスイッチを押します。ヒーターがONして251℃まで加熱できました。熱が漏れてしまうのか、ヒーターがONし続けてもこれ以上温度は上がらないようです。

改造は大成功。250℃まで加熱できるオーブンに改造できました。

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250℃オーブンになりました

分解と反対の手順で元に戻します。

温度ブーストスイッチにはBoostとシールを貼りました。

250℃まで加熱できるようになったので、普通の鉛フリーはんだのリフローができるようになりました。

このことで両面基板のリフローが可能になります。

最初の面は普通の鉛フリー(溶ける温度175℃、ピーク249℃)はんだでリフローし、反対の面を低融点鉛フリーはんだ(ピーク165℃)でリフローします。2回目のリフローは、1回目のはんだが溶ける温度よりも低いので、1回目にリフローしたはんだが溶け部品が取れることはありません。このため基板両面に対してリフローが可能になります。

両面実装基板のリフローは、分光計のLEDカラーチャート基板で実際にリフローできることが実証できました。

両面基板のリフローができるようになって、作れる物の幅が広がりました。

250℃まで加熱されることでオーブンの寿命は短くなってしまうでしょうが、壊れたらまた同じ物を購入しようと思います。