たくさんリードがあるVFDを、簡単に取り付けられるフットプリントの作り方をご紹介します。
VFDを基板に楽に組み立てる方法
IV-6 VFDは7セグメントVFDの中でもポピュラーです。IV-6には12本のリードがあります。このVFDを実装する基板は、通常ですと写真右のように12個の穴が並んだものになります。
12個の穴に次々とリードを差し込んでいくのですが、1本入っても次の1本が入れにくく、全てのリードを通すのに時間がかかってしまいます。
簡単にする方法1
そこで、次のような方法があります。(写真はニキシー管ですが方法は同じです)
上の写真のように、リードの長さを表の面に向けてどんどん短くなるようにカットします。
一番長いリードを基板の穴に差し込みます。次に、2番目に長い隣のリードを穴に差し込みます。次に3番目に長いリードを...
と、長いリードから順番に穴に差し込んでいきます。こうすることで、比較的楽に全てのリードを差し込むことができます。
簡単にする方法2
もう一つは、基板に工夫をしておく方法です。上の写真のように、中心をくり抜いた形状にしておきます。
VFDの全てのリードをこの中に通します。
それぞれの溝にリードをはめ込んで、はんだ付けすれば完成です。この方法はVFDの下準備が不要で、かなり短時間に全てのリードをはめ込むことができます。
楽に組み立てられるフットプリントの作り方
それでは、この楽に組み立てられるフットプリントの作り方をご紹介しましょう。
今回設計するのは、IV-6 VFDです。
IV-6のデータシートにピン配置が書いてあるます。しかしこのピン配置は部品を真下から見た場合のボトムビューで描かれていることに注意が必要です。
見慣れた上から見た時のピン配置(トップビュー)では、上の図のようになります。このフットプリントは、以前基板を設計した時のものです。先ほどのデータシートとはピン配置が左右反対なのがわかります。
ビアの位置を計算
まずは、リードが通るビアの位置を計算します。IV-6は12本のピンが均等に並んでいるので、3番ピンのピンを角度0度として、時計回りに360度を12分割した角度を計算します(左から3列目)。
実物は3番ピンは13度程傾いています。そのため-13度程度角度をずらします(左から4列目)。
角度が算出できたらxとyを計算します。x,yの位置は三角関数を使い計算します。
y = -COS(角度×3.14592÷180×半径)
半径:3.7mm
角度は先ほど計算した角度、半径は実物を測定した結果3.7mm程度でした。
この式で各ピンの位置を計算したのが、上の表の右側の2列になります。
長穴を考慮した位置を計算
基板の中央をくり抜くために、ビアの形状を長穴にする必要があります。上の図の黄色がビアで、水色の線がルーターでカットする線です。
長穴に対して、リードの位置は上の図のようになります。長穴の中心位置とリードの位置がずれています。
このため、先ほど計算したビアの位置をずらします。
ずれた位置を計算する前に、ビアの形状を決めます。
今回は各ビアの形状は、上記のようにしました。
穴サイズ:x=0.8mm y=1.2mm
穴は、y方向に1.2mmの長穴になっています。
VFDのリードの実際の直径は0.6mmです。そこで、ビアの中心位置をリードの位置から0.2mmずらすことにします。
先ほどの三角関数の式を修正します。
y = COS(角度×3.14592÷180×(半径-0.2))
半径:3.7mm
半径を0.2mmだけ小さくして、x,yの位置を計算したのが、表の右側の2列となります。
長穴の角度を計算
パッドは全て中心へ向かって、傾いている必要があります。このパッドの角度を計算します。
最初に求めた角度の符号を反転した値が、パッドの角度になります。
フットプリントの作成
これまでで求まった、x,yの位置と角度を使ってフットプリントを作ります。
パッドのプロパティのx位置、y位置、角度に計算値を入力して12個のパッドを描きます。
12個のパッドが並びました。
カットラインを描く
フットプリントの中央部を切り抜くためのカットラインを描くのですが、その前に準備をします。
まず1本線を引きます。
スタートは一つのビアの中心(上の図の1)です。その線は、ビアの長穴の側面が直線からカーブに差し掛かる部分(上の図の2)を通り、隣のビアまで引きます。
隣のビアでも同様に描きます。すると、2本の線が交差する場所ができます。
フットプリントの中心から、先ほどの交差する点を通る円を描きます。以上で準備は終了です。
カットラインはUser.2レイヤーで描きます。
ビアの中心と、隣のビアとの間にある先ほど描いた円に触れる点とを交互に結んでいきます。すると、上の図の水色のラインのようになります。
なぜUser.2レイヤーかというと、Edge.Cutsレイヤーで描いてしまった場合、パッドの中心に基板のエッジがある状態になってしまいます。すると、配線時の自動衝突判定によって、パッド中心へ配線が到達できず、パッドへの配線ができなくなってしまうのです。
そこで、フットプリントでは衝突判定とは関係ないUser.2レイヤーで描いておいて、全ての配線が終わった後にEdge.Cutsレイヤーに変更するという方法を取ります。
F.Countyardを半径6.25mmの円で描き、あとはお好みでシルクを入れて仕上げます。
以上でフットプリントの完成となります。
試しに見てみる
基板にフットプリントを置いて、3Dビュアーで見てみましょう。
先ほどご説明した理由から、User.2レイヤーの線をEdge.Cutsレイヤーへ変更する必要があります。
「編集」の中の「テキストと図形のプロパティを編集」をクリックします。
スコープの中の「フットプリント図形アイテム」にチェックを入れ、
フィルターで「User.2」レイヤーを選択し、
アクションでレイヤーに「Edge.Cuts」を選択します。
OKをクリック。
User.2レイヤーで描いた線がEdge.Cutsレイヤーに変更されました。それでは3Dビュアーで確認してみましょう。
中央がくり抜かれた基板が表示されました。これでフットプリントの完成です。
注文は端面スルーホール
このフットプリントを使った基板は、基板の端面にスルーホールがある構造のために、「端面スルーホール」扱いとなります。
このため、基板の注文時には、オプションの中の「端面スルーホール」にチェックを入れます。また、PCBWayでのみ実際にこの基板が製造できることが確認できています。
次回は、このフットプリントを使ってVFDを実装する基板を作りたいと思います。
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