5年前に作った目覚まし時計の姿をしたニキシー管時計の基板を、新たに作り直そうと思います。
この時計の制作記事はこちら「ニキシー管IN-14の回路を目覚まし時計に内蔵して「目覚まし時計風」の置き時計を作っています」です。
時計の中身
こちらが、時計の中身です。丸いユニバーサル基板に、ニキシー管のユニットが接続されています。
丸い基板には、
- ESP32 DevkitC
- Nixie DCDC
- プリバイアス付きのカソードドライバ
- アノードドライバ
の基板が載っています。
これらをまとめて、丸い基板上に制作して一枚の基板にしたいと思います。
回路
アノードドライバ回路
大まかに計算
アノードドライバには、ハイサイドドライブにするために、2段のトランジスタでドライブします。MMBTA92は300V耐圧のトランジスタMPSA92の表面実装タイプです。同様にMMBTA42は、MPSA42の表面実装タイプです。
R1を計算します。ニキシー管のアノード電流はIN-14の場合最大で2.5mAです。そこで、設計上は2倍の5mAが流せるように設計しようと思います。
MMBTA92の増幅率は25倍です。このため、トランジスタのベース電流は
5mA / 25 = 0.2mA 流します。
ベースに接続するR1の抵抗を求めます。
R = E / I = 175V / 0.2mA = 875kΩ 近い値として1MΩとします。
R2を計算します。MPSA42はMMBTA92のベース電流である0.2mAを十分に流せるようにします。MMBTA92の増幅率も25倍です。このため、トランジスタのベース電流は
0.2mA / 25 = 8uA。
ベースに接続する抵抗R2の値を求めます。
R = E / I = 3V / 8uA = 375kΩ
375kΩと求まったのですが、抵抗値が大きいとスイッチする速度が遅くなってします。そのため十分に速くスイッチできるよう、抵抗値を10kΩとしました。10kΩってちょうどよくって、100kΩですとスイッチの速度が遅くなり、1kΩですとベース電流が数mAと消費電流が大きくなってしまいます。
スピードアップコンデンサを追加する
上のグラフは先ほど決定したパラメータの回路を、シミュレーションしたグラフです。緑色はコントロール信号、紫はアノードの電圧です。
左のグラフはトランジスタと抵抗のみで構成した時の波形、右のグラフはR1と並列に100pFのコンデンサを接続した場合の波形です。
左から見てみましょう。トランジスタのベース抵抗が1MΩと大きくベース電流がとても小さいことから、コントロール信号が立ち上がっても、紫色のアノード電圧はゆっくりと立ち上がるのがわかります。だいたい2usかかっていますね。
これに対して、右側のグラフです。ベース抵抗にコンデンサを接続しました。コンデンサを追加することで、瞬間的にベース電流がたくさん流れるため、立ち上がりがとても速くなっています。
コンデンサの100pFという値は、シミュレーションで適当に設定しました。
カソードドライバ回路
カソードのドライバには、今回初めてHV5812というICを使ってみようと思います。このICは80Vに対応した出力ドライバがついているシフトレジスタです。これまでVFDのドライブにはよく使ってきたのですが、ニキシー管で使うのは初めてです。
80V出力なので、175Vのニキシー管はドライブできないと思うかもしれませんが、これがうまいことドライブできそうです。
HV5812の高電圧入力ピンVPPに、抵抗と75Vツェナーダイオードを接続し75Vを供給します。ニキシー管を消灯させたい時、OUTをHighにします。するとOUTには75Vが出力されます。ニキシー管のアノード電圧は175Vなので、アノード-カソード間の電圧差は100Vとなります。100Vではニキシー管は光りません。結果として消灯します。
また、ニキシー管のカソードにはアノードの電圧の175Vが現れますが、HV5812のP-MOS FETのボディーダイオードを経由してVPPピンに接続されているツェナーダイオードに接続されているために、VOUTの電圧は75Vにクランプされます。このため80V耐圧の出力ピンが壊れることはありまえん。
75Vのツェナーダイオードには5%の誤差のものを使います。5%誤差で最大78.75Vです。10%の場合最大82.5Vなので耐圧をオーバーしてしまいます。
ツェナーダイオードに接続してある抵抗は、220kΩとしました。ツェナーダイオードには0.5mA程度流れる設計です。HV5812がHigh出力になった時でもニキシー管へはほとんど電流が流れないために、この値としました。
ニキシー管を点灯させたい時には、HV5812の出力をLowにします。ニキシー管のカソードが0Vになり、ニキシー管が点灯します。
HV5812は20チャンネルの出力があります。ニキシー管は数字の表示に10ch、ドットに2ch必要なので、20chあれば十分です。
DATA 、CLK、STROBEの3つの信号で制御できます。74HC595と同じ使い方ができます。
ブロック図
制作するニキシー時計のブロック図は上の通りです。マイコンにはESP32 S3を使います。
ニキシー管の電源回路には、以前制作したNixie DCDCの回路を使います。

前回の時計の回路にはリアルタイムクロックICはなかったのですが、今回は搭載しようと思います。
また明るさセンサも搭載して、部屋が暗くなったらニキシー管も暗くなるような制御をしたいと思っています。
アートワーク
裏蓋の穴を活用
目覚まし時計の裏蓋には、穴がたくさん開いています。この穴を利用しようと思います。ネジ穴は、基板と裏蓋を固定するためのネジ穴として再利用し、左側の四角いスイッチがあった穴は、USBコネクタの穴にしようと思います。
また、中心にある2つの穴も、タクトスイッチの穴として利用します。
これらの位置を正確に測定して、イラストレータで描きSVGファイルとして保存します。
アートワーク
穴の位置データをUser.eco1レイヤーに読み込んで、それに合わせてアートワークを行います。
アートワークが完了しました。
PCBgogoに基板を発注
それではPCBgogoに基板を発注しましょう。
PCBgogoは、6月4日から6日までビックサイトで開催されるJPCA SHOW 2025に出展します。日本語で対応してくれるので、気楽に立ち寄ってみてください。
去年立ち寄った時の記事はこちら「PCBgogoが日本に来ていたので色々聞いて来ました」です。
基板パラーメータの設定
最低限「外形寸法」に基板のサイズ、「枚数」に製造する基板の枚数の2つを設定します。あとはお好みです。
基板の色を黒くしたかったので「レジスト」を「黒」に、表面処理は鉛フリーにしたかったので「無鉛はんだ」を選びました。
メタルマスクのパラメータ設定
メタルマスクも一緒に作ってもらいます。クリームはんだの印刷機を持っていないのであれば、「メタルマスクの種類」を「枠なし」にします。枠付きだととても大きくて重いメタルマスクが届いてしまいます。
「刷り側」が表面にしか部品がないので「表面のみ」にします。
PCBgogoではメタルマスクを指定のサイズにカットしてもらえます。私の場合はいつも基板のサイズ+20mmにカットしてもらっています。そのため「ご要望」の欄に「120mm x 120mmにカットしてください」と書いておきます。PCBgogoは日本語全然OKです。
以上でパラメータの設定は完了。
「見積作成」をクリックして、右側に表示される「カートに入れる」をクリックします。
ガーバーファイルのアップロード
「データ入稿」のウィンドが表示されるので、「ガーバーデーターを入稿」をクリックします。
ガーバーファイルをアップロードしたら、「確認」をクリック。
データレビューが開始される
PCBgogoによって、製造できるデータかどうかのチェックが開始されます。
支払い
レビューが完了するとメールが届きます。今回は1時間30分かかりました。
右下の「レジに進む」をクリックします。
お好みの発送手段を選択します。選択したら右側の「支払い」をクリックします。PayPalの決済画面が表示されるので、そこで支払いを完了させます。
以上で、発注完了です。
うまく動作するかな?
HV5812のカソードドライバ回路はうまく動作するでしょうか?また、裏蓋のネジ穴やUSBの穴の位置は合っているでしょうか?
ちょっと心配ですが、届くのが楽しみです。
ニキシー管を点灯させるのに必要な、高電圧DCDC売っています。5Vから175Vを生成し6mAまでドライブできます。

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