ニキシー管の表示技術で7セグメント表示デバイスの電卓Canolaを購入して修理しました。
多桁数字表示管
多桁数時表示管は、ニキシー管から蛍光表示管へ表示技術が移行する間のとても短い間だけ生産された、技術の隙間に埋もれてしまった表示デバイスです。
以前、このデバイスを使った電卓Canola1211を分解して、独自に表示させることに成功しています。
購入したCanola L811
今回購入した電卓は、販売当時の箱に入っていました。
箱の上部に持ち手があります。箱が縦置きされた状態で販売され、この手持ちを持って買ってウキウキで持って帰ったことでしょう。
箱を開けると当時の説明書と発泡スチロールの中にCanola L811が入っていました。
計算結果を一時記憶しておいて、次に計算した結果に加算することができるようになったようです。これがキヤノンの開発。
=を連打することで直前の計算を繰り返す機能は、今では普通になっていますが、当時は珍しかったんですね。
とても貴重なのでマニュアルをスキャンしておきました。上の画像をクリックするとpdfファイルがダウンロードできます。
L811の外観です。
表示器は8桁+オーバーフローを表示する桁となっています。
背面には型番のプレートがついています。
分解
背面のネジを外すと簡単に開けることができます。
表示器は45度に傾いたコネクタに刺さっています。
これまで分解してきたCanolaシリーズには、テキサスインスツルメンツのLSIが2つ入っていましたが、このモデルは日立のLSIが1つだけです。電卓ICを日本が内製できるようになったんですね。
ケースには昭和48年(1973年)6月2日のスタンプが押してあります。現在の福島キヤノン工場で作られていたのでしょうか?
基板はL1211同様に、片面基板でできています。
表示デバイス
表示デバイスは、日立製のラインスター H1893でした。8桁の7セグメントです。
以前調べた日立ラインスターの技術資料はこちらにあります。
白い部分はセラミックのようです。セラミックとガラスの間に、表示機構が入っています。中にはネオンガスが入っていて放電によってオレンジ色に光ります。
動作テスト
スイッチを入れても電源が入りませんでした。基板を見てみるとヒューズが切れています。ヒューズが切れたということは、回路上に何か問題があるのかもしれません。
2Aのヒューズを持っていなかったので、耐圧250V、Hold電流500mA、Trip電流1Aのリセッタブルヒューズをヒューズ代わりにして電源を入れてみます。
表示されません。
基板の裏にVDDやVSSなどの名称があるので、そのポイントの電圧をテスターで測定してみます。キーボードとつながる緑色のGNDと書かれた電線が、VDDと書かれた基板の配線に接続されていたので、VDDを基準に各ポイントの電圧を測定しました。
・VSS-VDD:13.3V
・VGG-VDD:-3.9V
・VPB-VDD:110.7V
HVは表示管のアノード用。VPBは表示管のプリバイアス電圧でしょう。
電源は正常に生成されていそうです。
修理
電源が正常なのに動作しないということは、ICが壊れているのかなぁと諦めていたのですが、基板をよくよく見ていると、配線と配線の間にはんだボールがくっついています。このはんだボールの電気的に手前側には3to8バイナリデコーダと思われるICがあり、この先には表示管のアノード用の8ch高電圧ドライバICがつながっています。
はんだボールを取ってみました。
おおおおおおお!!!!!点灯しましたよ!!
キーボードも正常に機能します。計算もできます。これがキヤノンの開発。
はんだボールでデコーダICの出力同士がショートして、過電流でヒューズが切れたのでしょう。ICが壊れていなくて良かったです。
ヒューズを代替
動作するようになったので、ヒューズを作ります。手元に2Aのヒューズがないので、切れたヒューズ管に先ほど使ったHold電流500mAのリセッタブルヒューズをはんだ付けしました。
ヒューズホルダーに自作ヒューズを取り付けました。
修理完了
正常に動作するようになりました。
本来は、分解して多桁表示管の日立ラインスターの表示デバイスを使った電子工作をしようと思っていたのですが、正常に動作するようになってしまい、説明書や箱などもあって、歴史的に貴重な物っぽい感じになってしまいました。
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いらっしゃなければ、ちょっともったいない感じもしますが、電子工作に使いたいと思います。
コメント
はじめまして.偶然記事を拝見して,失礼とは思いましたがコメントさせていただきます.同時代の電卓を持っていますが,3のキーが押されっぱなしなっていて(=自然には戻らない)正常に動作しません.こういうキーの故障は修理できるものなのでしょうか?